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*それぞれの楽しみ(正一)

君は気が付いているのかな?
君の微笑みに、いつも僕が見とれてしまっている事。
君と目が合うとドキドキして、僕の心臓が破裂しちゃうんじゃないかって思っている事。

僕が…

僕が…

君を好きだって事。


気が付いて欲しいけど
気が付いて欲しくない

臆病なこんな僕。


*****

「さて、後はこのデータを白蘭さんに送れば今日は終わりだ」

パソコンの前に長時間食らいついてやっと出来たデータを、ミルフィオーレの本部へと送信し、椅子がギシリと音がする程寄りかかりながら大きな伸びをする。

「肩凝ったなぁ…」

肩に手を置き首を回していると、本部からの通信を知らせるアラーム。

「送ったデータ、白蘭さんもう見たのか?早いなぁ…」

パソコン通信を接続し、ディスプレイに通信者の画像がリアルタイムに表示された。

『入江さん』

「わっ!えぇぇぇぇぇ!!名前さん!?」

いつもの白蘭の顔が映るとばかり思っていた正一は、驚きの余り椅子から転げ落ちる。

『きゃー!!入江さん?だ、だ、大丈夫ですか?入江さーん!』

あたたた…。

クラリと来る痛みに頭を抱えながらも、机に手を置き立ち上がりディスプレイをチラリと見れば、慌てている名前の姿。

『入江さん?』

「だ、大丈夫。滑っただけだから」

『本当に?驚きました…。でも、大丈夫なら良かったです』

安心して微笑む名前に、正一は視線をずらしなが誤魔化すように眼鏡を上げる。

「正ちゃん大丈夫?相変わらずだね」

名前の横に白蘭がひょっこりと顔を出し、正一を見てニヤニヤとする。

「白蘭さん。相変わらずって…それよりも、送ったデータは見てもらえたんですか?」

白蘭のニヤニヤとした笑顔の理由が分かる正一は、話を変えようと仕事の話に切り替える。

「せっかちだなぁ。今もらったばかりだよ?名前ちゃんにお願いした所。ねっ、名前ちゃん」

『はい。入江さんすみません。直ぐ確認しますので…受け取った連絡を先にしておこうと思って…見てから連絡するべきですよね』

「あ、いや、そう言う意味じゃなくて、あの、その…もー白蘭さん!!」

「えー僕に言われても困るんだけどなぁ」

シュンとする名前に、慌てる正一はどうフォローしていいのか分からず、ディスプレイの前でワタワタとするしか出来ない。

「正ちゃん酷いなぁ。名前ちゃんを苛めるなんてねぇ」

『いえ。私が…』

白蘭は、よしよしと名前の頭を撫でる。

『正ちゃん、名前ちゃんを怒らないでね。僕が正ちゃんに連絡をしてって頼んだんだよ。正ちゃんが名前ちゃんの顔を見たいだろうなって思ってさ』

「なっ///白蘭さん!!」

「正ちゃんて、本当に分かりやすいよね」

あはは…
笑う白蘭を、名前は不思議そうに首を傾げる。

『白蘭様?』

「名前ちゃんも早く気が付いてあげてよね」

『え?何がですか?』

「それはさぁ…」

「白蘭さん!!」

通信のスピーカーの音が割れる程の正一の叫び声に、二人は驚いて一瞬動きが止まる。

あはははは。

「まぁいいかぁ。正ちゃんごめんね、余計なお世話だよね」

からかい好きな白蘭を不満そうに睨みながら、痛み出したお腹をさする正一に、名前が不安そうに眉をハの字にしながら弱々しく声を掛ける。

『あ、あの…入江さん、本当にすみません。その…私がいけなかったんです。お腹大丈夫ですか?』

腹痛を心配され、正一は顔を赤くしながら大丈夫だと連呼する。

「名前ちゃん。そろそろ正ちゃんを解放してあげなきゃね。ごめんね、データみたらまた連絡するよ」

ヒラヒラと手を振る白蘭。

「分かりました」

『入江さん』

正一が通信を切ろうとした瞬間、名前の声に動きが止まる。

「?」

『あの、忙しいのにすみません。私、今度…任務で日本に行くんです』

「へ?」

『あ、だからなんだって事じゃないんですけど…その…お会い出来るのを楽しみにしてます』

「あ…はい」

名前の楽しみにしてますと言う言葉が、正一の頭に木霊している間に、ミルフィオーレとの通信は切れ、ディスプレイは黒くなっていた。

「来る…んだ名前さん」

右手を握りしめグッと貯めて…

よっしゃ!!

ガッツポーズ。
さっきまで腹痛で悩んでいたなんて嘘の様に晴れやかになっていて、柄にもなくデスクチェアに座ってそまま何度も嬉しそうに回転回転させる。

会えるんだ…。
緊張しそうだけど…
凄い楽しみだな。



*****

クスクス。
通信は既に切れてしまっていたが、白蘭は名前の言葉に正一が喜んでいる事が想像できた。

パソコンでデータの解析をしている名前を見ながら歩み寄ると、ディスプレイに腕を乗せ、名前を見下ろす。

「名前ちゃんて、本当に罪だよね」

『は?』

「だって、正ちゃんにあんな事言うなんてさ」

ニヤニヤする白蘭に首を傾げる名前。

『いけなかったでしょうか?でも、せっかく日本に行くんですし、日本支部の代表である入江さんには挨拶しなきゃ…』

「んーまぁそうだけどね。でも、正ちゃんは…。そうだ、名前ちゃんが行く時、僕も一緒に行こうかな」

『え?白蘭様も?』

「あれ〜?何か都合悪い?だって面白そうだしー」

『都合は悪くないんですけど、私、久しぶりの故郷なので幼なじみにも会おうかと思っていているんですが…』

「ん?それは構わないよ。なんだっけ、えっと…どこだっけ?」

『並盛です』

「ああ、それそれ。会えばいいんじゃない?その方が余計にこんがらがりそうで楽しいよ」

『は?』

「だって、名前ちゃんの幼なじみって、男の子でしょ?」

『そうですけど…??』

「スケジュール調整しなきゃ。フフフ。楽しみ、楽しみ。それに、日本のスイーツも楽しみだよねー」

一人で納得したように頷きながら部屋を出て行く白蘭を、首を傾げて見つめる名前。

『変な白蘭様。任務とは言え10年振りの日本。楽しみだなぁ…』


それぞれ楽しそうな思いを胸に。


END

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