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アイス(ディーノ)

『ん〜美味しい』

リビングのソファーに座り、愛用のスプーンで、大好きなバニラアイスを掬って食べれば、1日の疲れが癒やされる。

はぁ。幸せ。

「んだ、またアイス食べてんのか?」

『ん?まあね』

「本当に好きなんだなぁ」

呆れ顔で笑いながら私の隣に座るディーノに、少し拗ねた様に唇を尖らせて見せる。

「んな食べると太るんじゃねのか?」

『なっ、女の子に太るなんて言うのは失礼だよ!ん…でも、食べ過ぎかなぁ?』

言い返しながらも、少し気になってアイスを食べる手を止めて、スプーンを口元に置いたまま動かないでいると、ディーノが私を抱きしめる。

『ん〜まだ平気だぜ。それに、もう少し肉付いて柔らかくてもいいな…』

「なっ」

スキンシップ大好きなディーノは、抱きしめたまま軽いキスを私の頬にする。

『肉って言い方ないんじゃない?も〜腕が邪魔でアイス食べれないから』

嫌じゃないのに、照れ隠しでわざと不機嫌な声で言っても、ディーノには分かってしまうのか気にもとめず笑っている。

「なぁ、それオレにも一口くれよ」

小さい子供の様に、口を開けてアイスを欲しがる姿は、マフィアのボスだなんて思えない。

「駄目ー」

「んだよ。けちだなぁ」

そんな拗ねた事を言っても、私を抱きしめる腕は緩まない。
巨大なだっこちゃんが体についたまま、私はアイスを食べる。

「……」

しばらく静かだったディーノが、口を開いた。

「なぁ、アイスとオレどっちが好きだ?」

「は?」

思いもよらない質問。三流ドラマのヒロインが「あの子と私、どっちが好きなの?」なんて言うセリフみたい。
アイスと、ディーノを比べるなんて次元が違うのに。
抱き付いているディーノを見れば、甘い瞳を私に向け、キラキラと輝く金髪を私ね首筋にすりよらせて、まるで大型犬が甘えてる様。

「アイスとディーノを比べるなんて無理」

「んでだよ。じぁ、無人島にアイスかオレのどっちかしか持って行けないとしたらどうするんだ?」

なんと言う選択。
でも、無人島でディーノと二人…それはどうかなぁ?
部下が居ないディーノは、なんともへなちょこな時がある。まぁ、そこも可愛くて好きだけど。
ロマーリオさんが一緒に来てくれたらいいかも。でも、アイスかディーノしか選べないならロマーリオさんも一緒は駄目なのかなぁ?なんて、現実にありもしない事を考えている中も、ディーノは私の答えが聞きたいらしく、ジッと待っている。

「悩むなぁ」

「悩むのかよ!?」

「なんて嘘だよ。ディーノがいないと寂しいから。アイスよりディーノを選ぶ」

そう伝えれば、凄く嬉しそうな顔をして、私を抱きしめる力が強まる。
アイスに勝ったのがそんなに嬉しいのかなぁ…。

「じゃぁさ、ディーノは無人島に行くとしたら何を持って行く?」

自惚れじゃないけれど、彼の答えは分かっている。
私と答えるに違いない。
分かっていても、それでも、ディーノから聞きたくて質問をした。

「ん?行かないな」

「は?」

「いや、だから無人島には行かねぇよ」

いやいや、もしも行くとしたらと言う話なのに、回答が質問と噛み合ってないよ?

「もしもだよ。もしも行くとしたらだから」

もう一度聞き返すと、「うーん」唸りながら真剣に考えている。
そこまで考える事?

「やっぱり行かねぇからなぁ…」

なにそれ?私はちゃんとディーノだよって言ったのに?
なんだかムカついて、不機嫌な顔になる私の顔を、ディーノが不思議そうに覗き込む。

「なに怒ってんだ?」

「だって、ディーノがちゃんと答えないから」

「そんな事言っても…無人島にお前を連れて行くなんて危険だろ?連れていけねえし、だと無人島にオレ行くの嫌だし」

は?

「連れてったら、無人島になんてアイスねぇと思うし」

何それ?
本当に行く訳じゃないのに其処まで考えてるなんて…。

クスッ。

「ディーノらしいね」

「ん?何かおかしかったか?」

「違うよ。私って、ディーノに凄く愛されているんだなぁって思っただけ」

「なんだよ、今頃気が付いたのか?」

「んーそうじゃなくてなんて言うのかなぁ…」

上手く言葉に言い表せなくて悩んでしまう。

「アイスよらもっと好きになっただろ?」

極上の微笑みのディーノ。
そうだね、私の中で一番好きだよ。
仕方ないから、次は大好きなアイスを少し食べさせてあげる。

アイスよりも、なによりも大好きで大切。


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