不意打ち(雲雀)
放課後。
校舎の窓から見るオレンジ色の夕焼けが好き。
空も雲もオレンジ色に染まる。
明日もこの空を、のんびり見れたらいいな。
これが私の小さな楽しみ。
のんびり夕焼け空を見上げていると、何もかも忘れられ、なんだかとても気分がいい。
だから気が付かなかったのかもしれない。
いつの間にか、私のすぐ隣に人がいたなんて…。
ふわりと風を感じたと思ったら、頬に何かが軽く触れた。
え…?何?
何かが触れた頬に手をあてながら、そちらを振り向けば…。
『……ひ、雲雀先輩?』
少し口元をへの字にして不機嫌そうな顔で立っている雲雀先輩。
「いつまで僕の学校にいるつもり?用が無いなら、早く帰りよ」
えっと…。
今…私…頬に…あれ?
えっと?
ここには今、私と雲雀先輩だけ…。
雲雀先輩を見ても、特にリアクションが無いし、そうだよね、気のせいかな?頬に風が当たっただけかも。
頬にキスされたと思ったけど…でも、幾ら何でも、雲雀先輩が私にするなんて有り得ない。
『あ、すみません。すぐ帰ります』
慌てながら足元の鞄を手にして、雲雀先輩にぺこりと頭を下げつつ横を通り過ぎる。
はずだったのに、あれ?
雲雀先輩に腕を捕まれて…
「ねぇ」
『わっ、は、はい』
「無視しないでくれる?」
『えっと…』
雲雀先輩の顔を見ると、夕日の所為じゃなく、ほんのり赤い。
『え?え?やっぱりさっき…』
思わず声にすれば、私の顔も赤くなったのか、頬に熱を感じてしまう。
『わっ』
思わず引き寄せられて、雲雀先輩の腕の中。
「気を付けて帰りなよ。また、明日ね」
耳元で囁かれ余計に熱が上がる。
な、なんて不意打ち。
ドキドキして夕日どころじゃない。
また明日、夕日を見るときに雲雀先輩が側にいてくれたらいいな。
今度は、不意打ちじゃないキスを。
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