ささやかな祈り… 紅葉も深まるある日の事…。 眠気を誘う午後の授業の中休み、自分の席でボーッとしていたツナのもとへ来た山本は開口一番…。 「ツナ!放課後に、ちょっと付き合ってくれねー?」 と、いつもの調子で元気良く声を掛けてきた。 少しばかり頭がぼんやりしていたが、断る理由も無いツナは二つ返事で…。 「うん。良いよ〜」 と、了承すれば二カッと山本は笑う。 「そっか…。そんじゃっ、放課後な!」 そんな簡単なやり取りを終え、楽しそうに自分の席へと戻って行く山本の背中を眺めつつ…ツナは小さく微笑む。 (ホント、山本って…いつも元気良いなぁ…) つい先日までリング争奪戦のもと、恐ろしく強い暗殺者達を相手に戦い抜いたとは思えない程、山本は元気に明るく笑ってくれている…。 あんな戦いを経ても山本が変わらず笑顔でいてくれるのは嬉しい…。 けれど、一度足を踏み入れてしまったマフィアの世界…。 これからも、彼は変わらずに居てくれるだろうか…? ツナ自身も、これからどうなって行くのか分からないし…もしかしたら今のままでは居られなくなってしまうかもしれないけれど…。 出来れば山本は変わらず笑顔で居て欲しい…。 (だってさ…、山本はオレの大切な友達で…。誰よりも明るい日常が似合っているから…) 少しずつ眠気が覚めていく中、席に戻った山本の背中を見つめるツナは心の中で祈る…。 どうか、山本から明るい笑顔を奪わないで、と…。 |