※スターク目線
※R-15G
なんて酷い見せしめなのだろう
どうして選ばれたのは俺だったのか
それは余りに偶然が重なりすぎた出来事だった。
その日、藍染サマは十刃のひとりが行方知れずになったことで大層不機嫌になっていて。そんな日に限って俺が任務で失態を犯して。挙げ句俺が報告を入れたのは期限を過ぎた会議の最中。
憤怒の臨界点を越した主君が、射るような瞳で此方を見た。
その瞳に笑みは無く、唯事でない怒りを肌で感じ取ったことを覚えている。
きっと、他の十刃も戦慄しただろう。
静かに立ち上がった主君は無表情に此方に歩みより、目前で脚を止めた。
怒られるな、と。ぼんやり考えていた時には既に殴られていて、
床に倒れた俺を、他の奴等が刺すような視線で見ていた。
だれかの生唾を飲む音が聞こえる。
激怒した主君をみるのは誰もが初めてで。その莫大な怒りと震える霊圧に、だれもが硬直し恐怖を抱いていた。当然俺もそうだった。
「すいま、せん」
口にした謝罪と同時、咳き込んだ唇から滴る赤い液体。
それが自身の血液だと気付くより前に、藍染サマに髪を掴まれ、床に身体を打ち付けられた。
全身が軋む様に痛い。
涙を飲み込めば、地面に突っ伏す俺を掴みあげ、歪な笑みを男は浮かべる。
その笑みは酷く憤怒の混ざった笑顔で
戦慄し汗を滴らせれば、藍染サマは刹那目線を俺から反らした。
「十刃諸君」
凍るような言葉が、会議室に響く。
何時も騒ぎ立てているノイトラも、悪態を吐くグリムジョーも、臼笑みを浮かべているザエルアポロも、他の十刃も。この日は茫然と、俺と藍染サマを見比べて強張った顔を見せていた。
「覚えていてほしい。――私の怒りに触れたら、どうなるかを」
続いた主君の言葉の意味を、思考出来るほど理性は残されていない。
いやだ、こわい、いやだ。
此方に向き直した主君に、形振り構わず謝り続けた。が、主君は張り付いた笑みを浮かべたまま何も言わなかった。
「ごめんなさい…！！ゆるし…」
途切れる謝罪
痛む眼球
痛みで右目を瞑れば、
どろりとした血液が滴ってきた
「ぁ、ぁあ゛あ！！」
何が起こったか
理解したくないのに、理解してしまった。
突き刺さる細いナイフが、眼球を瞼から抉っている。
地面に倒れ痛みにのたうち回れば主君に肩を押さえつけられ、刺さったナイフを右へ左へ横暴に動かされた。
「ぐ、ぁ゛…ぁあ゛あ゛！！！」
頬に滴る血が涙の様にこぼれ落ちる。
左目で景色を見れば、十刃達は恐怖の顔色を浮かべていた。
その傍らで、微笑む藍染サマは酷く愉しそうだ。
「い゛、あ゛……あ゛ぐ…ぅ………」
だれか、たすけて
手を伸ばし何かにすがろうとしたが
誰も助けてくれるはずがない
伸ばした先に居たノイトラに、目を反らされた。
「が…っ……う゛、あ゛ぁあ……」
最早声か悲鳴にさえならない。
超越した痛みに肺がきりきりと痛み出す。うまく呼吸が出来なかった。
それでも主君の腕は止まらず、散々右目を荒らした挙げ句、そのナイフを数値の刻まれた左手に突き刺される。
「あ゛ぁ゛あああぁぁ……！！！」
悶絶する程の激痛。
左手を見れば、ナイフが肉を抉って貫通していた。
「この数字はお飾りなのかい？」
「あ゛、ぎ…ぁああぁ…あ゛あ゛！！」
始まる二度目の拷問。
掌を貫通したナイフを執拗に抜き差しされ、使い物にならない程ぼろぼろにされた。
(いたい、ゆるして、いたいいたい…)
心中で何度も念じるが、主君がそれを辞める事はない。
失神しそうになる痛みに痙攣を繰り返していれば、血に濡れた主君の指先が、首筋を掴んだ。
「ぐ、…ぁ……」
視界が揺れる。
意識が遠ざかる。
唇端から血の混じった涎を滴らせながら、自分が首を絞められているのことを理解した。
藍染サマが笑っている。
愉快そうに笑いながら、絞殺しようとしている。
きっと俺はこのまま殺されるのだろう。
痛みで麻痺した身体から酷い疲れを感じ、重い左瞼を閉じた、と。同時。
「…藍染様」
静寂と緊張を打ち破る、ひとりの男の声。
「その子、死んでまうで。ええの？」
暴君と化した男を止めたのは、同じ死神の男だった。
「………」
暫し黙り混んだ主君が、やがて指先を首から遠ざける。
入り込んだ新鮮な空気に咽び、咳と嘔吐を繰り返した。
立ち上がった主君が踵を返し、生臭い部屋を立ち去る。
乱暴に扉が閉められると同時。金縛りから溶けたように、他の十刃も呼吸しながら肩を落とした。
苦しみに喘いでいれば、主君を静止させた男が張り付いた笑みを浮かべ近付いてくる。
「藍染様もおいたが酷いもんや。大丈夫？」
男の手により身体を起こされた。
しかし答える気力など今はある筈が無く、呻きながら嗚咽と嘔吐を吐き続ける。
他の十刃からもなにか言われた気がしたが、意識を保つことにも限度を感じ、痙攣と共に失神した。
拷問ごっこ
行方不明十刃はネリエル
要するにノイトラさんが拷問されるべきです
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