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あ、困ってる。

少女は不意に片割れを見上げ、ぽつりと思った。
先程から半身の男は出くわしたQuintに絡まれ、ああとかそうかとか相槌を打ちながら話を聞き流している。その隣で暇を持て余す少女は、男が困憊してる事を悟り、垂れ下がった腕を掴んだ。

「行こ。スターク」

「へ。あ、ちょ……。
…悪いノイトラ。それじゃあ……」

振り返りながら男は謝罪を口にし、そして片割れに引きずられていった。
猫背になった図体を揺らす男を引きずる片割れは、どうしようもないこの男に溜息する。
スタークってばあたしが居ないと、会話も切り上げれないんだから。と、小さく心で思うと同時。男が漸く口を開いた。

「…リリネット」
とは言えその口唇は片割れを呼んだだけで直ぐに制止し、少女が目線を向ければ、言葉に詰まったらしく困惑した顔をしている。
足を止めたリリネットが踵を返し、躊躇なく股間を蹴り上げた。
「ぐ、おぉ…!!」
情けない声をあげて踞まった男に、少女は二度目の溜息を吐く。
「会話ぐらい直ぐに切り上げてくれば良いじゃん!スタークの馬鹿!!」

自分だって飽きていた癖に。
何に気を使っているのか。
誰を気にしているのか。

スタークは愛想笑いを浮かべるだけで、自分から話を打ち切る事はしないのだ。
だからずるずる話が長くなる。
誰より長く傍に居る片割れだからこそ解る、男の特徴だった。
「…それと、キンタマ蹴る事は……別、だろ……」
少女の前で土下座する様に体を丸め、奇声に似た呻きを上げながら股間を抑える男は酷く滑稽だ。
無意識に三回目の溜息を吐き、少女は身を屈めた。

「しっかりしなよ。あんた、プリメーラでしょ」
そうして手を差し出せば、その小さな手を掴んだ男が噸と立ち上がる。
起立したは良いがまだ痛むのかやや呻き身体をぐらつかせた男が、脂汗を拭いながら、少女の頭を撫でた。
「…そうだな」
その表情は酷く安らかで優美だ。
片割れの少女でさえ呆然と見据えてしまう優しい笑顔を浮かべながら、男は続けた。

「俺達は、プリメーラだ」
「…スターク」
無意識か、いや、意図的か。
ひとりをふたりに加算した男は、小さな手を握り、自宮に向かい歩き出す。


強いけど弱虫で。
優しいけど馬鹿で。
あたしだけどあたしじゃない。
だからあたしはスタークが好き。

"スターク"だけのプリメーラを
"スタークとリリネット"と言ってくれる。

そんなスタークだから、大好き。


少女は掌を握り返す。
繋ぎ合った指先から、あたたかい温もりを感じた。



ふたりごと











リリネットは"あんたがプリメーラ"て言うけど、スタークは"俺達がプリメーラ"て言うなあと思ってやった。といっても台詞がわたしもうろ覚えだから自信ない。

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