冬の日だまり(良太猫)
あたたかい料理とあたたかいお酒を求めるお客で化猫茶屋は今日も大賑わい。
ようやく夜明けが来て、最後のお客を見送って化猫組はやっとこさ休憩につくことができた。
「冬の日だまり」
組長である良太猫は手拭いもつけたままこたつにもぐり込んでいた。
一晩中働きづめで凝り固まった肩を回したりしてほぐしていると、真正面の障子が遠慮がちに開いた。
「要じゃねぇか!そんなとこにいねェで入って来なせぇ」
『うん!』
招かれて嬉しそうに部屋の中に入ってきたのは、最近奴良組にやってきた要であった。
見た目は人間の娘と変わらないが彼女もれっきとした妖怪だ。
『肩がこってるの?』
「ん?まあ、ちょっとだけな。そんなことより外は寒かっただろ、こたつ入んな」
『平気だよ!だから良ちゃんの肩揉んであげる』
「そうかい?じゃあちょっとだけ頼む」
良太猫と要が出会うきっかけとなったのは、雪女や青田坊ら幹部たちの飲み会に要が連れてこられたのがきっかけだった。
最初は挨拶を交わしただけだったが、飲み会の最中幹部たちは出入りに行ってしまい、戦闘向きでない要を良太猫に預けていなくなってしまったのだ。
奴良組に来て日の浅かった要は初め困惑していたようであったが、良太猫と花札などをして遊んでいるうちに化猫組にすっかりなじんで
特に良太猫になついて、今に至るという。
良太猫は小柄な方ではあるが、やはり男は男。肩に置かれた要の手はずいぶんと小さくみえる。
それでも一生懸命力をこめて凝りをほぐそうとがんばる姿はなんとも甲斐甲斐しい。
『きもちいいですかー』
「ああ‥上手いなァ 要は」
『へへ』
ほめられて嬉しい。もっとがんばろうと要は膝立ちをやめて立ち上がった。
そしてあるものに興味をひかれた。
(ねこみみだ…)
そう、猫耳。よほど気持ちがいいのか少し垂れたそれはふさふさで、誰もがそっと手を触れてみたくなる代物だ。
(でも…
一昨年お庭に来てたネコの耳さわったら嫌がってたからなぁ…)
要の親指がツボを刺激すると良太猫の耳がビクリと逆立って、また垂れた。
(くっ!!か、かわいい…!すっごいさわりたくなってきた!!まずいよッ)
これ以上見てたら誘惑に負けてしまう!!そう思って要は必死に顔を背ける。
でも、気になる。
また見る。
触りたくなる。
顔を背ける。
この一連の動作を繰り返しているうちに要の手が良太猫の首にかかっていた。
「ぐっ?!
ちょ、…っ要!?」
『へ?!‥ぎゃあ!!ご、ごめんなさい!!』
「ゲホッ…し、死ぬかと思った…。一体どうしたんだい?要…」
喉元をさすりながら聞く良太猫。要はまさか『あなたの耳が気になって気になって仕方なかったんです』などと正直に言えるはずもなく謝り続けるしかなかった。
『ごめんね…ちょっと考え事しちゃって』
「かまわねぇけど…なんか悩んでるんならワシでよけりゃあ相談にのるぜ?」
『…ほ、ほんとに?』
「おう」
人懐こい笑顔で良太猫は言う。要はしばし考える。相談にのってくれるというのなら、思いきって言ってみようか。
今このチャンスを逃したら一生さわることなんて出来ないかもしれない…。また同じようなチャンスがくるなんて思っていてはダメだ!!
たかが耳ひとつ触るのにも真剣に考察した結果、要は口を開いた。
『良ちゃんの、その、耳に触らせてもらえたりしたら悩みは解決するんだ!よ!』
「……へ??
ワシの、耳??」
ゆで上がったタコ並に顔を真っ赤にして高速で首を縦に振る要。首振り人形も顔負けの動きだ。
「ん〜〜〜。耳やら尻尾やらを触られんのはあんまり好きじゃねぇんだが…
要の頼みとあっちゃ仕方ねぇな!ほれ」
『い、いいの!?』
「強く掴んだりひっこぬこうとしなけりゃな!」
『そんなことしない!!
じ、じゃあ失礼します』
そぉ〜っと手を伸ばし、これまたそぉ〜〜っと念願の良太猫の耳に触れた。
想像していたよりもずっとふさふさであたたかくて、心がぽかぽかする。
良太猫も、優しく撫でられて心地よさに目を細めていた。
(たまにはこんなのも悪くねぇなぁ‥)
2人の間に流れる空気は、冬の寒さを和らげる日向のようで、とてもあたたかく心地のよいものだとか。
***
無月様宅の企画に参加させて頂きました!
そして「良太猫を良ちゃんと呼びたい」という意味不明なリクエストをシンクロ率120%で叶えて下さいました無月様はまさにゴッド。良太猫かわいいよ良太猫(^///^)
実は私は陰で良太猫のことを良ちゃんと呼んでいるんだ。痛い?うん知ってる!
ありがとうございました無月様!
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