よろしくお願いします(猩影)
「…」
「…」
ベットの上で正座をして向かい合うオレと唯。
やばい、長い沈黙と気まずさで言葉を発することが出来ない…!
どうしてこうなったのか。
それはもう成り行きとしか言えない。
オレたちはゲームをしていた。
ボス戦だった。
そのボスのHPは恐ろしく高く二人がかりでも何度か死んだ。そして数時間の長い戦いの末やっと倒すことが出来たのだ。
きゃあきゃあ喜ぶ唯を横目に、はーっと安堵の息を吐きしみじみと達成感に浸る。
するといきなり唯が「爆牙弾!」なんて言って背中をズダダダと叩いてきたんだ。
あ、爆牙弾ってのはさっきやってたゲームで出てくる技の名前な。
まあオレもそれに対抗して技を繰り出したり防御などをしていた。
それがヒートアップしてくすぐり合いになったり、どちらが先に相手の顔を携帯におさめる事が出来るか、などと言う良く分からない対決になり、そして終いには何故だかプロレスごっこにまで発展した。プロレスごっこと言っても勿論じゃれあう程度のものだけど。
そして気付いたら戦いのリングはベットの上。今度はどちらが先にベットの下へ蹴落とすかの勝負。
唯がケラケラと笑いながら落とそうとしてくるのでオレも「やーめーろーよー☆」みたいなノリで、またじゃれあう。
ふと気付いたときにはオレは唯の上に覆い被さっていて、唯の服は乱れに乱れ、なんというか、まあ、端から見ればなんかアレな体勢なっていた。
唯もこの状況に気付いたのか気まずそうな顔をしている。
オレはそろそろと唯の上から退き、唯は起き上がり乱れた服を直し、何故かお互い正座になって今に至る。と言う訳だ。
「…」
「…」
あーもう何この空気!?
なんかあれじゃん、これそういう雰囲気じゃん。
オレと唯は付き合っている。けど付き合う前から仲が良かったからか、今まで友達の延長みたいな付き合いだった。
「えっと…唯?」
「な、何」
「どうしよっか」
「ど、どうするって…何を?」
「や、なんか変な雰囲気になったから…」
「えー…じゃあ、する?」
「…………へっ!?」
「あの、もう一度ゲームとか」
「あ…そっちか…」
「…でもボス倒したよね…」
「…倒したな…」
「…」
「…」
「…する?」
「…プロレスごっこ?」
「えっと…違くて…」
「ベットからの落とし合い?」
「ち…がう」
「じゃあ何だよ」
「…言わせないでよ…」
そうぼそりと呟き顔を真っ赤にして俯く唯。
「…え?…え、え、…マジ?」
「マジっす…」
「い、いいの?」
「い、いいの…」
「あ…そう…?………じゃあ、」
よろしくお願いします
あ、こちらこそ
「やめたくなったらすぐ言えよ。あ、あと痛かったら右手を挙げろ。」
「何その歯医者みたいな…」
「本当に大丈夫か?怖くねえの?」
「え…怖いけど…猩影だから、大丈夫」
「…!」
お前それ…反則だろ。
最中に唯は右手を挙げましたがオレは止まれませんでした。ごめん唯。
***
友達→恋人のカップルって色々と気まずいよねって話。
技名はTOIのエルの技から抜粋ですよ。連打系と格闘系が好きすぎて死ねる…
※某少女漫画でこの話と似たような描写があるようですが、それとは全くの無関係ですのでご理解頂きたいです。
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