[携帯モード] [URL送信]
gentle man

さわさわと爽やかな風が私の横を掠めた。今はもう遠くなってみることはできないのに私は船尾のデッキに張り付いて、いつまでも水平線を眺めていた。


「後悔してるのか?」


後ろから聞こえた声は私をこの船に誘った張本人のエース隊長。私は振り返らずにさらさらと流れる髪を耳にかけた。


「後悔なんてしてません」
「だったら、なんでいつまでも故郷の島の方角を眺めてんだ?」


私の思っていることをエース隊長はすべて見透かされてるんだろうな。背中に視線を感じながらも私は答えた。


「ホームシックってやつですかね…」
「家族に会いたくなったか」
「…そうかもしれないです。ちゃんとしたお別れもできなかったので」


この船の船員になってもう一ヶ月は経つのにホームシックなんて笑われちゃうかな。何か理由があったわけじゃない。朝目覚めたら急にお母さんの作った朝食が食べたくなったのだ。そしたら今、家族はどうしているんだろうと急にいろんなことが気になり始めた。みんな元気かな。私がいなくても楽しく過ごしているだ ろうか。


「エース隊長はホームシックにならなかったんですか?」
「あァ。俺はもともと海賊になりたかったからな。…だが弟と会いたいと思ったことは何度かある」
「じゃぁ、エース隊長もホームシックは体験済みなんですね」


追い風のおかげで俺のはホームシックっていわねェんだよと小さな声ですねたエース隊長の声が私の耳にも届いてきた。エース隊長は一度すねてしまうとなかなか機嫌を直さない。くすりと笑った後にごめんなさいと一応謝罪をした。

すると急に背中に圧迫感を感じて、気がつくと私の体は後からぎゅっとエース隊長に抱きしめられていた。海を見つめている私は甲板の様子なんてわからないけどその瞬間、きっと甲板にいる誰もが私たちに視線を向けただろう。


「エース隊長、みんな見てますよ?」
「んなの関係ねェ」


耳元にかかるエース隊長の吐息にドキッとしてしまう。どうやら本当にすねてしまったみたいだ。私の飛び出してしまいそうな心臓のことなんてお構いなしにエース隊長はさらに抱きしめている腕に力を入れて体を密着させる。さて、問題はこのままの体制でいつまで私の心臓が持つかだ。エース隊長、ともう一度呼んでみたが、それは優しく私の耳元で囁かれた言葉によってかき消されてしまった。


「寂しくなったら俺に言え」
「え?」
「ホームシックなんて忘れさせてやるから」


一言一言話す度にエース隊長は腕に力を入れてどんどんと私とエース隊長は密着していく。ドキンドキンと動いている心臓は今にも張り裂けてしまそうだし締め 付けられている体が痛い。だけど背中から伝わってくるエース隊長の熱が心地よくて私は静かに目を瞑った。


「寂しいなんて感じたことないです」


エース隊長がいるから、とは言えなかったけど隊長はふっと笑った後、そうかと言って私の首筋に顔を埋めた。



▼100424
相互記念としてポッカさんに捧げます。相互記念書かせてください!と意気込んで言ったくせにすごくすごく遅くなってしまって申し訳ありません;;
こんな奴ですが、これからもよろしくお願いします(^o^)
⇒水島さんありがとうございました!!私もエースに後ろから抱きしめられたい!!笑こちらこそ、これからもよろしくお願いします!!


[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!