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硝子のシンデレラの靴

まさかこの日が
やってくるなんて、
願ったことはあっても
望んだことは
なかったのに。

ある日
おとうさんに呼ばれて
部屋に行けば、
そこには椅子に
どっかと座る
おとうさんと、
その横に立つのは
……マルコさん。

「名無し、お前、
冬島育ちだったろ?
次の島は冬島だ。
ちょっくら用事を
頼まれろよ」

「…いいけど、
用事ってなに?」

「マルコが全部
説明してくれる」

え?マルコ?
マルコさんも
一緒に行くって
解釈しろって
こと?

…そっか、うーん、

マルコさんとは
殆ど話したこと
ないんだよな。
おはようございます
とか
お疲れさまです
とかしか話してない。
うちの隊の隊長とは
仲がいいんだけどさ。

人見知りが激しい私は
正直にいうと
あまり乗り気では
なかった。

「…名無し、
よろしくな。
その日は悪いが
一日空けて
おいてくれよい」

「…はい」




おとうさんに
呼ばれてから
5日が経った。

「…名無し、入るよい」

「どうぞ」

がちゃり。
年季の入った
焦茶色の木製の扉から
うっすらと光が伸び、
黒い人影が映された。

「予定通り
明日には着くらしい」

「…そうですか」

「酒は飲めるかい?」

「…たしなむくらいには」

「そうかい」

どうぞ、と言って
椅子を勧める。
扉と同じ木製の椅子。
マルコさんは、
ああ、わりいと言って
ゆっくりと座った。

私は
透明の硝子のコップを
ふたつ手にして、
マルコさんと
向かいあうように
ベッドに腰掛けた。

マルコさんとは
あれから何度か
会話を交わした。
廊下ですれ違ったり、
うちの隊長を介して、
だったりしたが。



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あきゅろす。
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