「あなたがいると、仕事に集中できないんですよ」
それは、やっぱり迷惑だということじゃないだろうか。そう思ったのが顔に出たのかもしれない。ジェイドはすぐに、そうじゃありませんと言った。
後頭部に手のひらが当てられて、少しだけ前へ押された。こつん、とジェイドの額が俺の額に触れる。
「ガイがして下さることを迷惑だと思ったことはありませんよ。そうではなくてですね、つまり」
つまり、なんて余計な言葉を挟むのも、続く言葉を躊躇うのも、ジェイドらしくない。
「傍に好きな相手がいるのに、仕事のことばかり考えられるわけないでしょう?」
こんな風に、言い訳じみた言い方をするのも。
だけど、それはとても。
「…つまり、そういうことですよ」

嬉しくて、堪らなかった。
傍に居て、堪らなく落ち着く存在なんだけど、それと同じくらいそわそわしたり、言動にいちいちどきどきしたり、そんなのは俺だけだと思ってたのに。

「いい年して恥ずかしいでしょう。だから黙っていたかったんです」
顔を見られたくないのか、少し乱暴に抱き締められた。そんな行動に、思わず頬が緩む。
「傍に居ても居なくても同じ、ってのは?」
「わかりませんか?」
さっき、ジェイドが過剰に反応した言葉。意味はなんとなくわかった。けどさ。
「ちゃんと聞きたい」
「…あなたが傍に居ても、居なくても、仕事が捗らないってことです」
「へえ、そうなのかい。俺が傍に居ても居なくても、気になるってことだと思ったんだけどなぁ」
「まあ、そういうことにしておいてもいいですよ」
やばい、喉の奥から笑いが込み上げてくる。
だっておかしいじゃないか。普段は散々愛してるなんて言うジェイドが、こんなことで照れてるだなんて。
堪えきれなくて、くっくっと肩を震わせた。
「何笑ってるんですか。本当にお仕置きしちゃいますよー、ガ〜イ?」
「それは勘弁してくれ。いや、悪い…でもさ…」
申し訳ないとは思うけど、なかなか自分の意思で止められるものでもない。はぁっと深呼吸をして、なんとか落ち着いた。
目の前は依然として、青に埋め尽くされている。ふと、顔が見たくなった。どんな顔をしているのか気になったのもあるけど、なんだか、唐突に。けど、俺を抱き締める腕は、まだ離してくれる気はなさそうだ。
少し胸を押してみても駄目。
「もう少し、このままでいさせて下さい。1週間ぶりなんですから」
それは確かにそうだし、俺だってこうしてるのが嫌なわけじゃあないけど。
ああ、わかった。
それよりも、求めているのは。

寂しかった。

会いたかった。

…触れたかった。

1週間ぶりなんだから、ジェイドと同じくらい、らしくないことを言うのもいいだろう?
…まあ、ちょっと恥ずかしいんだけど。だけどもう一度見たいんだ。さっきのあの顔を。

「じゃあ、1週間ぶりにキスしないか?ジェイド」
「…さっき、したじゃないですか」
「1週間分にしちゃ、足りないだろ?」
「そう、ですね…全然、足りませんね」

唇が触れるまでの間に見たジェイドがどんな顔をしていたかというと。
…悪いけど、それは俺だけの秘密だ。



END


有り難い事に相互記念でけい様に頂きました!!ありがとうございます!!
喧嘩しても甘い二人という欲望丸出しのリクエストをしたところこんなにも素敵な文を頂きました!
ジェイドもガイも可愛くて可愛くて!
ジェイドの「傍に居ても居なくても同じなら、」のところが無茶苦茶にツボでして、そこを問い詰めるガイとガイを意識しちゃってるジェイドがもうほんっとう大好きです!!最初の喧嘩のシーンからもう萌えですよね、可愛いですよね!!語りだしたら止まりません!本当に嬉しくて仕方ありません!

けい様本当にありがとうございました!

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あきゅろす。
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