大嫌いと言いたかった
※ガイ16歳の設定です


其れは仇の息子だ。



御昼時、太陽が真上に上って照らすその木陰の下で自分はただ本を読む。与えられたお昼休み、逃げるようにしてやってきた屋敷の裏にある其処に座って、一枚ページを捲る。次の文章の羅列が現われて、またそれに視線を落とす、それを延々と繰り返す。まだ昼休みは長い。
遠くで公爵の御子息様が自分を呼ぶ声が聞こえたが、其れは無視する。今は読書に集中したい。
ぱらり、反して内容は頭には入らないけれども。

「がーい、がぁい、がーい」
近くなった声に顔を上げる。ああ、呼ばれてる、なんて今さらで。けれどもまた其れを無視した。足音が大きくなる、後数歩だろうか。
「がぁーい」
最後にじゃり、という音がして止まった足音に顔を上げる。
目の前で碧色の大きな瞳をきらきらと光らせてこちらを見る姿はまるで幼い子供のようであった。(実際彼は幼いのだ)
何呼んでるの、なんて聞かれてなんだと思う、なんて返す自分は意地悪だと思った。案の定、意地悪、とルークは頬を膨らませた。その頬を一撫してやって、本を閉じる。
興味本位で伸ばされた手がそれを掴んで、見せて、なんて笑う。一所懸命に笑う。
何でも大きく動こうとするのは子供らしいといえばそうだけれども(それでも誘拐される前あんなに公爵の理想のお人形さんみたいだったルークからは想像がつかなくて)
「大したものじゃないですよ」
笑ってルークへとその本を渡す。
嬉しそうに笑って受け取って、其れを開く。細かい文字の並んだそれにルークは難しそうな顔をした後ぽつりと、読めないと愚痴を零した。
そうですね、読めませんね。だから勉強しましょうね。
そう言ってやれば、ルークは逃げるようにして走る。ガイのばーか、なんて叫んで、こけた。
ああほら後ろ向いて走るからだ、注意してその足についた汚れを払う。幸い傷は無かった。それでもルークは泣きやまなかった。
「ガイのばかぁ、だいっきらいぃ」
わんわん、と無くそのルークの頭を撫でる。
泣き止ましたいのに反して、こっちだって好きなんかじゃないさ、なんて子供の様に返そうとして、止まる。
ああどうして。

大嫌いと言いたかった(でも言えなかった)
(それは愛する人達を奪った仇の息子なのに何を迷っているんだ自分はこの子どもが大事だとでもいうのか馬鹿馬鹿しい)

にやり



あきゅろす。
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