星回りのペガサスに乗せたちゃちな運命論を夢みる君が好きなんだ



にやりと含んだ笑いでこちらへと向かって来たものだから何かあるとは思ったのだ。思っていたのと予測は全く違うものではあるのだが。
「ガイラルディア!」
ばっさぁぁああ!
書類が辺り一面にひらひらと舞うのを見て青ざめる。ああ、ああ、何をしているのだこの皇帝は、何がしたいんだこの馬鹿皇帝は!
上ずった声をあげて陛下を呼ぶ、何してるんですか、男は嬉しそうに笑った、紙吹雪、いいだろう。いいわけあるか。
ひらひら舞っている書類から覗いた赤い判子で重要と印されたそれが目に入ってくらりとする、眩暈だ、そりゃあする、国一つの運命(が掛かっているかもしれない)を握る書類がばらばらと散りながら地面に拡がるのを笑いながら駄目ですよなんて叱る余裕はあるか、否、無い、無いに決まっている。
此等がなんなのか分かっているんですか。けろりとした表情でそれがどうした、と行ってのけた男にああどうしようもなさを感じたのはどうしようもない。
一歩でも動けば書類に靴の跡がついてしまいそうだと恐れて動けないガイとは違ってすたすたと真直ぐにピオニーはガイへと向かう。それにガイは内心慌てふためいていたのだがそんなのはピオニーには関係ないのだろう。
目の前に立ったピオニーにどうかしましたかと問えば、じいと見つめた後に一笑する、好きだと。
「もしこの書類よりも国よりもお前が大切だと言ったらどうするか」
其の答えは簡単であった。それは俺の好きな陛下ではこざいません。はっきりと告げて遣ればピオニーは大きな声を上げて笑った後にそれでいいのだと頷いた。
「お前を一番には選んでやれん」
「はい」
「でもお前が好きだ」
「はい」
分かっていますよ。頷き返せばぎゅうと抱き締められる、ああ好きだ。肩に掛かる重みにわかりましたからと背中をぽんぽんと撫でてやる。書類には既に取り返しのつかないぐらいに一直線な足跡がついていたが今更にはどうしようもないから溜め息を吐くことで諦めた。
「それでも俺の一番は陛下に差し上げますから」
そう言ってやればすまないなと言う返事と嬉しさを滲ませた笑みを浮かべたからああ好きだなと思った。



星回りのペガサスに乗せたちゃちな運命論を夢みる君が好きなんだ

夜風にまたがるニルバーナ



あきゅろす。
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