ここはさよならをいう魚の墓場




消えることは許さない。


目の前の自身より低い位置にある赤に迫れば赤はぽつんと立つだけであった。どうすればいいのか分からない様な情けない声で名前を呼ばれてそれが嫌で仕方なくてただがむしゃらに背中に腕を回す。泣きはしない、しないけれども。赤はじい、とこちらを見つめる、其の目に未だ自分が移っていることが幸せなのか或いは不安なのか等は分からないぐらいには混乱していた。彼の選んだ道に自分が居ない事実だけが其処にぽつんとあって、それが酷く憎らしい反面、悲しい。どうして、なんて聞いたって無駄なのは分かっていた。ただ女みたいに迫ることしか出来ない自分は常識と現状に押し潰されて死んでしまいそうであった。或いは、彼の代わりに自分が、なんて(馬鹿な考えをするもんではない)
ガイ、と名前をもう一度呼ばれる、背中に回し返された腕が意外にも力強く、ああ辛かった。



ここはさよならをいう魚の墓場

酸素




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