LJ←A;翡翠の男へ届かぬ愛よ



「あなたの中に、ルークはいるんですね」
紅い瞳に見つめられて聞かれた言葉は予測するには簡単なものだった。
かつん、と床を蹴る音と共に一歩分近くなる。
男の質問には確信めいたものが確かにあって、自身もそれを否定するつもりはなかった。
ルークは、男が求める人は確かに自身の中にいる。名を呼べば返事をするわけではないが、それでも確実に。一人の物としては多すぎる記憶は何も言わずともそれを確信に変える。
男の質問に彼の代わりに返事をする。もちろん否定ではなく、肯定の。
その答えの後、泣きそうに歪められた男の顔は、ああ、出来るならば見たくはないものだった。その顔は誰が為なのか。愚問だった。
「ルーク」
かつん、と確実に歩み寄る男の足。呼ばれた名前は自分の物であるはずなのに(呼ばれたのは自分じゃない)
「ルーク」
また一歩、近づいて。喉に何かが突き刺さるような錯覚が自分を責める。それは思わず叫びそうになった言葉の抵抗だったのだろうか。つきつきと引きつるように痛む喉が逃げれないと警告する。
「ルーク」
思わず後ろに下がってしまいそうになる。自分は一体何に怯えているのだろうか。恐れているのだろうか。
近寄ってくる男が恐い?違う。わかっている。
その唇が。

「ルーク」

やめてくれやめてくれやめてくれ!
それは。



「愛してます」

瞬間、抱き締められる。記憶の中、何度も感じた決して温かくもない温度が自分を包み込む。
愛の告白、抱擁、泣きそうな顔。男が自分にみせたもの。
けれどそれは何一つ自身のものではない。これは全て(レプリカへの、)
男の眼に自分はいないのだ、きっとこれからも。

それでも。
振りほどけないこの腕はきっと、彼の所為なのだと錯覚して。



翡翠の男へ届かぬ


ルーク←ジェイ←アシュ
片想い


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