人を殺しても色を変えない瞳を恐ろしいと思った事が無いといったら嘘になる。赤い瞳が人間を焼いて潰して貫こうにもどうにも歪まない様にどうして恐ろしく無い等と思えるのだろうか。後悔の、哀傷すら見せない其の赤を恐ろしく無いなんてそんな馬鹿な話は無かった。夕焼けの、濃く染まったそれに似て、然し何よりも血の色と言うのがよく似合う其の赤に見つめられて微笑み掛けられる。温かい感情等其処にはない。あるのは懐疑的なそれだ。赤い瞳が三日月の様に細められ薄い綺麗な唇は弧を描く。真夜中、不気味なそれに逃げてしまいたくなっても、机を挟んで向かい合った今の自分、宿屋の一室、逃げられるのは唯一ベッドの上だけであった。飲みかけのグラスを置いて、さも酔ったかの様に振る舞う。嗚呼そう言えば飲んでいた酒もこの男によく似た赤い葡萄酒であった。気分が悪い。立ち上がってふらつく事もなく確かな足取りでベッドへと向かう。おやもう寝るのですかと掛けられた言葉に適当に相槌をうって横になる。ぴんとはられたシーツに皺がよって形が崩れて、柔らかいそれに先程迄はちっとも感じなかった眠気がじんわりと自分を襲うのに目を瞑る。お休みなさいと掛けられた声に返事をして外方を向く。

「寝首なんて掻きませんから安心して寝てください」

楽しげな男の声に小さく息を殺した。厭なおっさんめ。




腹の探り合いをしていた時のJG


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