僕が死んでその亡骸に花が咲くのなら



「ホドには桜という木があったのでしょう」

脈絡等無い話にガイは思わずはあ、と聞き返してはジェイドを見やった。相変わらずに涼しい顔をして男は持っていた本をぱたんと閉じて横へと置く。栞が少しだけ覗いていた。ホドには桜という木があったのでしょう。あった、あったさ。桃色の小さな花弁が春には華発する綺麗な、綺麗な木が。だからジェイドの質問に肯定の返事を返せば満足そうに男は一笑したのだ。嗚呼、何が気に入ったと云うのだろうか。

「好いですねぇ、一度は見てみたかった」
「随分と綺麗な花を咲かせてね。一斉に薄い桃色が咲いて綺麗なんだ」
「それで根元には死体が埋まっているんですよね」
「は」
「やですねぇ、冗談ですよ」

はははは、とジェイドは笑ってのけた後、ずい、と顔を少しだけ近付けて、微笑する。有名でしょう。桜は血を吸って桃色に咲く話は。有名だけれども。けれども。

「ああ、好いですね桜。綺麗なんでしょうね」



僕が死んでその亡骸に花が咲くのなら
彗星03号は落下した



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