ソリュブルラヴァー



ジェイドと云う人間を自分はまだ全然知らないんだと思う。
そう思ったのはジェイドの意外な交遊関係だとか、陛下との会話だとか、軍人としてのジェイドを見た時だとか、多分にある。そしてその一つ一つがジェイドを構成していると思うと自分はジェイドの事を知らな過ぎると思った。自身の中でジェイドは大きな存在であった。大き過ぎたのだ。
思えば多寡だか1年にも満たない旅仲間だったのだ。当たり前だと云えば当たり前だ。当たり前なのだが、何か矢張り寂しいのだ。男同士で可笑しいとは思うのだがジェイドと恋人という関係を結んだ以上もっと知りたいと欲が出てくる。そう、自分は恋人なのだ。そうして考えるとなんとも情けない恋人だな、とガイは小さく溜息を吐いた。また知らなくて当然だとも思った。
相手は35歳、軍人。自分は21歳、元使用人。そもそもに生きてきた年数さえ違うのだ。追いつこうたって無理な話なのだ。
そうしてガイは瞑っていた目を開けて目の前の光景を逃げること無く見つめた。仕方ない、仕方ないのだ。
「ジェイド、これ」
「可愛いでしょう」
そういってひらりとレースが舞う。薄いピンクのスカートが可愛らしく揺れて、まぁ確かにジェイドの言う様に可愛い。女の子が着ていたらときめくものがあったかもしれない。女の子であったならどれだけに幸せだっただろうか。女の子なら大歓迎だ、女性は大好きだ。くどい様だが女性であったなら。
そうして目の前の光景を冷めた目で見つめてやる。腰の周りの白いレースの付いたリボン、首元の大きく空いたワンピース。ああ、可愛いさ、可愛いとも。ただ問題はサイズが大きいとかそういうことであって。
「これ、どうしたんだ」
指さすのも億劫であった。ただ視線の先のそれをジェイドは直ぐ様に貰ったんですよと答えた。誰がこんなサイズの服を貰ってくるのであろうか。女性用のサイズでは無いだろうそれをどうして貰ってこれるのであろうか。ああ、頭が痛い。
ジェイドが嬉しそうに笑ってはいるのだが、反して自分はどんどんと憂鬱になるばかりであった。貰って来たんですよ、の本当の答えは、買って来たのだろうか、或いは陛下から貰ったのであろうか、どちらかであった。恐らくに後者であろう。
そうして、ジェイドがもう一度そのピンクを揺らして、ガイ、と名前を呼んだ。なんだい。返答した自分の声は案外に冷静であった。

「着て下さい」
「遠慮するよ」



ソリュブルラヴァー

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