うさぎは青を零すだろうか



ひらり、と軍服を翻して歩を進めれば、青が風に靡いてはたはたと揺れる。堂々と一歩一歩を踏み出してそうして歩く姿はまさに軍人であった。只ポケットに突っ込んでいる手だけはそうは見えなかったのだが。独特な彼の、ジェイドの歩き方にガイは視線を向ける事で追い掛ける。相手は自分に気付いてはいない。亜麻色の綺麗な髪がさらさらと風に悪戯されるのを只じいと見るだけである。マルクトの青が進んで行くのをじい、と。それだけだ。
然し意外にもジェイドが進む足を止めてこちらへと振り向く。気付いていたのだろうか。開いた距離を埋める様に迷い無く真っ直ぐにこちらへと歩み寄る。ガァイ、と陽気な声を掛けられて、どきりとするどころか、ふにゃりと力が抜けてしまったが。

「見惚れてました?」
「いってろ」

力なく上げた掌をひらひらと左右に振って、ガイは外方を向いた。つれないですねぇ、とジェイドがやれやれと両手を上げて首を振る動作を視界の隅に捕らえてジェイドへと視線を戻す。仕事は終わったのか、と問い掛ければ一段落したので休憩ですとやんわりと笑う。

「お茶に付き合って頂けると嬉しいのですが」
「そんぐらいお安い御用さ」

そうして一笑したジェイドが歩き始めた後ろを歩いて、青を伺い見る。青、似合っているなと笑って遣れば、理解したのだろうジェイドがありがとうございます、と苦笑する。ですが、とくるりと振り向いたジェイドの混じることの無い紅い瞳が嬉しそうに細められてそうして笑う。

「貴方の青が一番好きですがね」


うさぎは青を零すだろうか
夜風にまたがるニルバーナ

ジェイドが昇進を受け入れた話



あきゅろす。
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