ちくりと痛む心臓が刺された



好きなんです、と。

長い髪がさらりと頬を撫でてはらはらと舞う。くすぐったい。絡まる事無く、重力に従ってさらさらと揺れる。状況が押し倒されているのだと認識するのに時間はそういらなかった。
目の前には無表情にも近いジェイドの顔があって。片手が起き上がろうとする肩を掴んではベッドへと叩きつける。只、ジェイドの綺麗な亜麻色が窓から入り込んできた風に一本一本が美しく靡くのを何処か別の情景の様にも感じた。

そうして薄い唇がゆっくりと動く。

好きなんです、と。ジェイドの唇から小さな声で囁かれたそれにガイはぽかんと口を開けたままに固まる。好きだと。口にした目の前の男が分からないのではなく、只単純に自分の置かれている状況が分からなかった。ジェイドの赤く、反して冷たい瞳が自分を写して微かに歪んだ。分かりますか、と問われて正直に分からないと返せばジェイドの唇がもう一度開かれる。

好きなんです、貴方が。

そうして胸元に顔を埋めた男にどうしてか、訳の分からぬ感情が芽生えた。亜麻色の糸に隠された顔がどうしてか泣いている様にも思えた。さらさらと風が駆け抜ける。
只、心臓がちくりと痛んだ。




ちくりと痛む心臓が刺され
にやり




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!