スタンドバイミーの法則



傍に居るのが当たり前だと思っていたわけじゃないというのは当たり前に言い訳だ。嘘だ。全くの反対だ。傍に居るのが当たり前だったんだ。此迄も此れからも、ずっと、幼なじみでも親友でも使用人としてもどんな形でも。自分が本物のルークじゃないと分かった時でさえ俺にとっての本物はお前さと笑ってくれたあいつが此れからもずっと傍に居てくれると思っていた、否正確には思ってはいなかった、当たり前の事項として自身の胸のなかにあったのだ。
ごろり、と寝返りをうつ事でベッド脇、隣へと立っていたガイを視界から消す。そうしてルークは小さく呼吸をした、自身をそうして保った。

「それじゃあ、俺は行くからな」
「ああ」

ガイが僅かに後ろへと下がった。俺が居ないからって泣くなよ、とふざけて笑うガイに誰が泣くかってのと強がりを返す。実際泣くわけは無かった。何故か行ってしまうのかという事実しか頭の中には無かった。悲しみは其処にはない。筈だ。
恐らくにこの屋敷の玄関にてジェイドが待っているのだろう、待たせると悪いからとガイが柔らかく告げたことがどうでもよかった。只無言で待ち続けているだろう男がガイを連れて行くのだと思って、そうしてマルクトで仲良く暮らす事が別の次元の話にすら思えた。
じゃあな、と頭を二度ぽんぽんと叩かれ。最後にわしゃと髪を乱される。それがお別れの合図だと分かって目を瞑る。ガイが髪を一房絡ませて名残惜しそうに手を放していってくれたからルークは少しだけ救われた。ガイが淋しがって行くのは嘘だよと笑ってくれればいいのに。
止めとばかりに、腹出して寝るなよと苦笑したガイに抱きついて迫り泣く事など出来なかった。



スタンドバイミーの法
にやり



あきゅろす。
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