syrupy!





「付き合わせて悪かったな」

荷物を抱え直して隣を歩く男の表情を伺い見れば不機嫌の色も疲労の色も無く、別にいいですよと笑い掛けられて安心した。とはいえこの男が怒ることなんてそんなにもないので少しは分かってた応えだったのだが。

グランコクマに生活することになって陛下に屋敷をひとつ譲ってもらって、さて生活に必要な物を買いに行こうと思った矢先、ジェイドがガイの元へと訪れたのだ。
何処に行くのですか、聞かれて行先を話したら付き添ってもいいですかと問われて特に断る理由も無かった。いいけど、つまんないと思うぜ。聞けば構いませんよという返事しか返ってこなかったのでそのまま買い物へと向かって、今に至る。

とりあえず必要だと思われるものは買って(とはいえ大きな家具は既に陛下からプレゼントされていたので、それ以外のものなのだが)あとは帰るだけなのだが、それではやはりガイの気は済まなかった。
どうしようか、と考えて視線を辺りへと向ければ、それなりに繁盛している喫茶店が目に入る。
「ジェイド、あそこでお茶でもしないか」
俺が奢るからさ、とガイの誘いにジェイドは悩むことなく頷いた。
「いやあ、ガイも大分お年寄りに労わりの気持ちを持ってくれましたねぇ」
「よくいう」
誰がお年寄りだよ。呟いた言葉に楽しそうな笑い声が返ってくるだけだった。


「あんた、本当に甘いもん好きだよな」
「いいじゃないですか、別に太るような体質でもありませんし」
「それ、女性の前では言うなよ」
怖すぎる、とガイは肩を竦めた。
ジェイドが頼んだのはコーヒーでも紅茶でもなく、大きなパフェをひとつ(確かフルーツがなんたら、とかそんな名前だったような気もする)で、ガイはその可笑しな光景に今更ながら苦笑した。
旅をしてる時からジェイドが甘いものを好きなことは知っていたのだが、こうして一緒の喫茶店に入ってジェイドがパフェやらを注文したのを見たことはまだ数回ぐらいしかなかった。
まるで女性の様だな、なんて笑ってやれば嫌ですねぇこんな綺麗なおっさんを女性扱いするなんて等とふざけた言葉が返ってきたので、呆れるしか出来なかった。
と、目の前に一口分のチョコアイスの乗ったスプーンが差し出される。
「ガイも一口どうです」
「いや、見てるだけで十分だよ」
昔は、そういえば自分もケーキ等の類が好きであったが、今ではそんなにも甘いものが欲しいなんてことは特にはなかった。
断りを入れて、未だ温かい微糖のコーヒーを一口飲み込んで目の前の光景を再び見れば、いつもより嬉しそうな顔が目に入り安心した。
「本当、美味しそうに食べるよな」
「癒されますから」
にっこりと嘘くさい笑みを浮かべて(嘘ではないのだろうけど、なんだかもうそんな印象が張り付いてしまっている)けれどもそれをすぐ軽い笑みのものに移す。ありがとうございます、とのお礼にガイはこちらこそ、と返した。



「偶にはデートだっていいと思いませんか」
「ていうかこれ、デートだったのかよ」



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特に意味のない話
のんびりお昼デートしてるJGが書きたかったんです
御題配布元>>夜風にまたがるニルバーナ


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