そして滑らかな刺を吐くのだ



べろり、と耳を舐められた。それに伴いぎゃっ、と小さな悲鳴を上げた。何故か気分を良くしたジェイドが満足気に笑うのに、ガイは表情を苛立ちのそれにする。何をするのかと問えば、興味があったので、と。
そうやって悪戯に笑ってジェイドはもう一度耳へと口を近付けるのを肩を押すことで押さえて遣れば、それでもジェイドは笑うだけであった。意味が分からない。軽くに首を傾げてジェイドをじいと見てやれば矢張りジェイドは笑った。何ですか、と。近寄ってきた顔にガイはぎょっ、として離れようとしたが、抱き寄せられる事でそれは叶わなかった。
ジェイドのたまに仕掛けてくる悪戯なのか、或いはスキンシップであるのか。それがガイにはよく分からなかった。自分から触れることは別にして、人と触れ合う事に不慣れな(それは早くに家族を亡くした事からか、又は女性恐怖症からか。おそらくは前者であろう)ガイにとってみれば、それはどうすればいいのか分からないものであった。女性であればセクハラ等と騒げたかもしれないが、女性でないのが自分であるのだし。何より、スキンシップにしては度を過ぎているそれをセクハラ等と云う気力も認識も無かった。
ただ、ジェイドが何をしたいのか、それが分からないだけで。ガイにはそれが現状の全てであった。
「ジェイド」
名前を呼べば、優しい声色で返事が返ってくるものの現状は可笑しい。壁際に追いやられて、両腕で出口を塞がれているこの状況は矢張り普通では無いだろうと、ガイは思った。
そうしてもう一度名前を呼んで、漸くに何をしたいのか問うてみれば、一驚から、直ぐ様に面白そうな表情へと変わったジェイドが分からないんですか、と問い返して来たものだから不思議であった。分かるわけ無いだろう。とは返すもののガイには一つだけ思い当たる物があったのも事実であった。じい、と赤い瞳を見てそうしてジェイドを抱き寄せてやる。それに喫驚したようにジェイドがガイと呼んだのに、面倒臭いおっさんだとガイは笑った。
「甘えたいなら素直に言えって」
「そうですか」
そうやってされるが儘にジェイドはガイへと凭れ掛かる。
そうやってこれであっていたのだろうとガイが苦笑すれば、ジェイドがぼそりと呟いた。流石天然たらしですね。聞こえたそれにどういう意味かが分からなかった。ただ思うが儘にジェイドへと問い掛ければ愉しそうに顔を歪めてジェイドはガイから少し離れて、じいと目を見る。
分かりませんか、
ああ。
その会話の後にすっと、頬をジェイドの意外にも大きく暖かな掌で包まれる。そうして細められた赤い瞳に見つめられて、(自分は逃げ道を失うのだ)



そして滑らかな刺を吐くのだ

夜風にまたがるニルバーナ




口説きに掛かっていたジェイドと勘違いをしたガイなジェイガイ



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