愛色心中



「お前もいい加減に何処其処で女でも捕まえてこんと枯れるだけだぞ」
厭らしい笑みと共に告げられた言葉にジェイドはやれやれとため息を吐く。私の事より貴方でしょうと呟けばピオニーはいいや、とそれを否定する。お前が好い人連れてくる迄は俺は結婚等絶対にせんからな。そういって足を組み直した幼なじみへとジェイドはもう一度ため息を吐く。如何してこの男はこうにも面倒なのであろうか。何より面倒が嫌いな癖に、彼が持ちかける物と言えば面倒ばかりなのだ。何という矛盾だろうか。眼鏡を押し上げてジェイドは書類をピオニーの前へと差し出す。それにピオニーの顔は直ぐ様に歪んだ。
「これを明日迄にお願いします」
「お前は俺を過労死させる気か」
「それもいいかもしれません」
この鬼、鬼畜眼鏡。ピオニーが毒吐くのをジェイドはありがとうございます、とにこやかに笑い飛ばしてやった。そうしてやれば、ピオニーが黙って書類を受け取るのが分かっていたからであった。案の定きちんと受け取ったピオニーにジェイドは安堵する。気紛れなこの男の行動は中々に計算しづらい。単純だと表現されやすいが、意外にも複雑だと云うこともジェイドは理解していた。
「それでだ、ジェイド、俺のお見合いをお前が代わりに受けてみんか」
「お断りします」
「何故だ」
「当たり前でしょう。何より面倒です」
ピオニーの顔が残念そうに歪んだ。それを合図の様にジェイドは好きな方がいますので、と告げればピオニーは直ぐ様に顔を上げた。目はきらきらと輝いているようにも思う。
「好きな奴だと」
「はい」
「お前が」
「ええ、そうです」
「そうかそうか、」
本当に嬉しそうに笑う幼なじみにジェイドも笑いかけてやる。それでは私は失礼しますね、と踵を返せば待てと止められる。
「相手は誰だ」
「誰だと思います」
あなたの知っている方ですよ、と言って遣ればそんなのでわかるかと怒られる。特徴を言え、と言われて思い付く物を挙げてやる。
金髪、青い目、健康的な肌、高い背。其処まで言ってもピオニーも分からなかったのだろう。首をかしげて、俺の事か、と馬鹿らしくも問うて来たもんだから、違いますよ、と直ぐ様に突っ込んでやる。ああ、あと、そうして柔らかく微笑んでやれば、丁度いいタイミングで、扉のノックが鳴る。入ってこい、とピオニーの合図と共に入って来た人物に其の笑みは深くなるばかりであった。

「ああ、ガイ、丁度よかった。貴方の話をしていたんですよ」




38℃の欲槽



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