溺れた人魚の水葬




昔に付き合った女性がそれはまた酷い金槌でしてね海に突き落としてみれば醜く泣くんです喚くんですよ助けて助けてくださいって可笑しかったんですがその時に一番可笑しかったのは私なんですよね自覚ぐらいはしてますよああ然し本当に可笑しかったもう一度ぐらいはみたいかもしれません。


なら俺と別れて泳げない女性でも口説いて来たらどうだい。ああそれは勘弁です、私は貴方を離すつもりはありませんので。
にこりと笑って告げられた言葉に適当に返す、ああそうかい。どうでもいいのかと問われればどうでもいいことは無いが然しだからと言って本気になる話でもない。ジェイドの膝の上に頭を乗っけている今のこの状況ではジェイドが愛しさの籠もった瞳でこちらを見てくるのを受けとめるしか出来なかった。優しく頭を撫でられて機嫌が良くなる、それで、問えばジェイドは締めとばかしに人間は汚いものこそが本当に美しいのかもしれません、と笑った。何だそれと釣られて軽く笑えばジェイドはまた優しく頭を撫でた。

「それじゃあジェイドは何が綺麗だと思うんだい」
「さあ、何でしょうか」

くすくすと笑うジェイドを見上げて唇を見る。薄いそれを見やっていればそれはそうですね、と動く。あの女性は本当に醜かったのかもしれませんねと続けたジェイドにどっちなんだかと突いてやる。あれは可笑しくて醜かった、醜かったから可笑しかったのだ。ジェイドが撫でる手を止めてガイの眼を見る。海の色ですね、それとも夜空の色でしょうかと悩むのをどちらでもいいだろうと蹴ってしまえばそうですね、どちらでもいいです、とまた手を動かす。

「ガイが溺れたら助けてあげますよ」

告げられた其の言葉に残念だったなと笑ってやる。

俺は泳げるよ。
(ああほんと残念!)




にやり




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