チョコレート症候群



お菓子がいっぱい詰まったバスケットに時たま手を伸ばすジェイドを確認する。その手は二つ三つお菓子を取っては暫くしてまた伸ばされての繰り返しで、特に変わった事は無かった。敢えて言うのであればそれがチョコレートばっかりだということであろうが、ジェイドのお菓子好きは今に始まった事ではないのでほおっておく。そもそもこのお菓子達はジェイドの為に用意したものであるから食べてくれるだけでも嬉しいのだ。また三つ、今度はミルクチョコレートを取っていくジェイドを確認してまた本に視線を戻した。

「チョコが気に入ったのか」
「ええまあ、どうしてです?」
「旦那、さっきからそれしか食べてないからさ」
「よく見てますね」

愛ですかねぇ。もごもごと口を動かしながら受け答えするジェイドは器用な事に書類を読みながら紙にペンを走らせている。愛だと吐かしたジェイドにまあそれでいいんじゃないかと適当に先程の返事を返したなら、ちらりとこちらを伺った後にジェイドは少し可笑しそうにそうですかと微笑んだ。どうしたのか問えばいえ何でもないんです、とジェイドは手を動かし始めたもんだからまあいいかという気が起きた為、詳しく問うことは止めた。

「後どれくらいかかるんだ」
「少しですよ」
「じゃあ紅茶でも入れてくるよ」

本を開いた儘ソファーに置いて立ち上がり扉の前に立つ。何がいい、問えばミルクティが良いと返事が返されたのでドアノブを捻ってわかった、と部屋を出た。




「チョコを食べた後のミルクティって甘くないことないか」
「私は好きですよ」

相も変わらずチョコレートを食べ続けるジェイドを見てみれば本当に美味しそうに食べていた。ふうん、と適当に返事をしてバスケットの中を見ればチョコレートはもう後少ししか無かった。あ、無くなるな、まあ他のお菓子も有るし、足さなくて大丈夫かな。見れば矢張り見事な具合にチョコレートだけが無くなっていく。飽きないのかいと問えば全くとはっきり返された。そうしてすっ、とまた腕が伸ばされてバスケットからチョコレートを取っていく、あ、それで最後だ、思わず声に出してしまい、それにジェイドが反応する、ああ是で終わりですか、もっと食べたかったんですかねぇ。言いながらも包み紙を開けて口の中にチョコレートを放り込むジェイドにじゃあまた今度持ってくるよと言えばありがとうございますと赤い目を細めてジェイドは笑った。御馳走様でした。チョコレートの包装紙で出来た小さな山を屑入れに入れようと手を伸ばせばその手を掴まれてにっこりと微笑まれる。

「美味しかったです」
「そうか、なら明日にでも持ってくるな」
「ええ、また作って下さい」

其の言葉に一驚してジェイドを見れば可笑しそうに笑った後にもう一度美味しかったです、と告げられたもんだから、ああやっぱりこの男には隠し事は通じないなと苦笑するしか出来なかった。



チョコレート症候群の症状例


(そんな女の子みたいに堂々と渡すなんて事は出来ないし気色悪いしだからと言ってやらなかったらやらなかったでなんか悪い気がしたからまあ分からない程度ならいいかなとは思ったんだがやっぱり無理だったか)
(そりゃわかりますよ、私好みの甘さのチョコなんて貴方以外に誰が作れるんですか)
(それは盲点だった)



最初からチョコが手作りだと分かっていたジェイドと気付かれてないと思いながらも内心どきどきだったガイなJG。

09//バレンタイン


にやり




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