にゃーにゃーにゃー
※裏目指して玉砕文ですのでちょっと際どいです




こんこん、と丁寧にノックの後に入ってきたその人物は珍しいことに帽子を被っていて。けれど彼だって年頃なのだ、似合ってますよ、と言ってやれば複雑そうな顔でこちらをみやるものだから何かおかしくて。どうかしたのか、と思った矢先、彼―ガイは口を開く。

「実は」





「ガイ、それはなんですか」
「わからないから旦那に聞きにきたんだよ」
そういって項垂れたガイと同じようにそれもぺたりと項垂れた。あまりのことに吃驚して思わず言葉を失う。
実は、といってガイが見せたものは帽子の下にあった。ぶかぶかとしたその帽子を恐る恐る取るガイに若干違和感を感じつつも彼の次の言葉を待とうと思った、のだが。その帽子から現れた二つの、それこそ人間であればないはずのそれに思わず言葉が出る。ぴょこん、と存在を主張するそれは獣の耳であって、その形大きさからするに猫のものなのだろう。有り得ないことを承知であなたは猫だったのですか、と問えば真剣にそんなことあるわけないだろう、と返される。当たり前だ、彼の頭は嫌と言うほど見たがそれでもそこにこんなものがあったことなどないし、彼が猫と同じような言動をしたことなど一切ない。(まあ魚が好きなのだと言った彼に猫みたいですね、といったことはあるのだが)つまりは突然それが現れたということで間違いないのだろう。あまりにも不思議な現象に思わずすごいですね、と呟いたら楽しんでないでどうにかしてくれと怒られた。
「それにしても何故いきなりこんなものが」
触ってみればそれはちゃんと温もりを持っていて爪を立てると痛い、と言われたから神経も繋がっているのだろう。何か変なものを食べた、というベタなことはないだろうし、顎に手を当てて考え込んでいると、ガイが旦那でもわからないのか、としょんぼりした。
「そういえばガイ、しっぽはないんですか」
そう聞くとガイはベストの尻尾を捲って小さく縛っている尻尾を見せてみた。成程、ベストで隠れるようにしていたのだろう。痛かったのだろうか、きつく縛っていた紐を解いてやると安心したような溜息を吐いた。と、突然悪戯心が沸いた。
「がーい!」
にっこりと微笑むとガイは嫌そうに顔を歪めた。今すぐにでも逃げてしまいそうな腰を掴んで思いっきりこちらへ引っ張ると慌てたようにしてガイは抱きついてくる。それをいいことに尻尾の根元を擽る様に撫でるとぎく、と固くなった身体と思わずでてしまったのだろう、防ぎれなかった声が彼の口から聞こえた。
「ちょ、なにしてんだよおっさん」
「いやですねー、ちょっとした好奇心じゃないですか」
根元からいやらしく撫でると体が腕の中でびくりびくりと震えて愛しくてたまらない。なるほど、尻尾のほうにも神経は繋がっているみたいである。調子にのって尻尾を口の中に入れて噛むとさらに激しく震えていやだ、と背中を叩かれた。その仕草がたまらなく可愛いくて。ふるふる、と振られた頭についている耳の中を抉るように舐めたらとうとう本気で抵抗し始めた。ばしばし、と背中を殴り続けるその手を無視して柔らかなソファーの上に押し倒すとガイと目が合う。潤んだその瞳には自分しか映っていない。当然だろう。それに満足して、けれども右足に違和感を感じてちらりとそちらを見やれば、彼の尻尾が絡みついて離れない。
「嫌がってるわりには、満更でもないみたいですね」
「?、なにいってんだ」
「これ、なんですか」
そういって尻尾のことを指摘すると最初はなんのことかわからなかったのだろう、きょとん、として。けれどもすぐに真っ赤になって彼は尻尾に手を伸ばす。そのすきに。
「すいません、とまれそうにないです」
「は?・・・って、ちょっ、待てっ」
目の前の無防備な首筋に吸いつくとびくん、と大きく震えて。抗議の声を上げようにも声を抑えることに必死なのだろう。吸い続けながら尻尾も弄ってやるとぎゅう、とガイは私の頭を押さえつけてきたから。ああ、ほんと止まらないじゃないか、と苦笑してそのまま美味しく頂いた。

彼がどうしてこうなったのかはわからないが、結論としては、こういうプレイもいいものである。ということだけはよくわかった。
人生は何事も経験ですね。



2/22

ちなみに彼の猫化はとりあえず次の日には治っていた。が。それが再発したのはまた別の話。



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ここまで読んでくださってありがとうございました。


あきゅろす。
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