世界一甘いキス、かはわからないけど



「お母さんは大変ですね」
ルークやナタリア達の部屋から帰って一言目はそれだった。恐らく、歳下であるルークや彼女達へとプレゼントを運んだガイに対して労いの言葉なのかもしれなかったが、それでもお母さんはないだろうとガイは思った。がそれを口にするのは止めた。素直にありがとう、と言えば、おや否定しないんですね、と言われたものだから、やはり少しは否定すればよかったのかもしれない。
ジェイドの隣へと座れば代わりに立ちあがったジェイドがグラスを取ってきてそれにワインを注ぐ。どうですか、そういわれて頂くよ、と返す。7分目ぐらいまで注がれたそれを受け取って、ジェイドはまた隣へと座り直した。かちん。乾杯、とグラスとグラスのぶつかる音の後、お互いにワインを飲む。そこらへんのよりは高いお酒なのだろう、慣れない味がした。それでも美味しいのには変わりないのだが。
「お務めご苦労様です」
「ああ、ありがとう」
にこり、と笑い掛けられて、ガイも笑う。明日起きた時にルーク達がプレゼントを気に入ってくれるかはわからない(そもそも欲しいものがはっきりとはわからなかった)けれども、まだまだ未成年である彼らが少しでも喜んでくれればいいと思う。
緩んだ頬に、本当にお母さんみたいですね、とからかって来たのは適当に流す。だから何で俺がお母さんだ、なんて聞いたら決まってるでしょう、と今の状況やらを指されて笑われそうなので言い返さないけれども。
「ジェイドは、ルーク達に」
「ええ、あげませんよ」
けろりとして返されたその言葉に妙に納得した。そもそもイベント事に進んで参加するジェイドというのは酷く想像しがたい。
けれども、今日夕飯の後に食べたケーキはジェイドが買って来たわけで、全く祝ってないというわけでもないのはわかっているのだけれども。
「旦那も大概保護者だよな」
「おや、心外ですね」
ふふ、と笑うジェイドが、それでもそのことを自覚していることはわかった。なんだかんだ言っても彼だって仲間が、彼らが心配で愛しいのだ。
グラスに口をつけてもう一度中の液体を飲み込む。赤紫のその色は酷く綺麗だと思った。外を見れば、雪がしんしんと降り積もって、見事なホワイトクリスマスだった。珍しいななんて思う。(ホドでもキムラスカでもクリスマスに雪なんて滅多に見なかった)流石はケテルブルクだと思う。(図らずに丁度立ち寄ったのがここだったのだ。ルーク達はすごく喜んだものだ。ナイスタイミングというかなんというか。)
「ああ、そうですガイ」
「なんだい」
「私からもプレゼントがあるんですが」
いりませんか。問われて吃驚してでもすぐさま、欲しいと答えた。まさか貰えるなんて思っても無かった、と言えばジェイドに、私からみたら貴方もまだまだ子供なのでね、と笑われた。多寡だか14歳だろ、と言えば14歳は大きいですよ、とジェイドは返す。その通りなのだけれども。(素直に納得してやる気なんてない)
ジェイドはポケットへと手を入れて小さな箱を取り出した。取り出された其れにガイは首を傾げる。一体何なんだい。問えば開けてみてくださいとそれを掌へと置かれた。
「これ」
「手、貸してください」
蓋を開けて覗いたプレゼントであるそれをジェイドの手袋を外した長い指が摘まみ取る。反対の手で左手を優しく取られて、薬指へとそれを通される。シンプルな指輪が、ランプの光を受けて微かに光った。
「あんた、阿呆じゃないのか」
「おや、プロポーズのつもりなんですが、伝わりませんかね」
伝わったよ、伝わったから阿呆じゃないのか、と問うてるわけで。大体さっき人の事を子供扱いしたのは誰だよ。あんたじゃないか。
気障なことするよな、と言えば、貴方ほどじゃありませんよ、と返される。これに勝る気障があるかよ、なんて。恥ずかしくていってやらないけれども。
「それで、返事くださいませんか」
意地悪に笑うジェイドに、知ってるくせにと内心毒吐く。けれども、まあクリスマスだから。少しぐらいはプレゼント、ということで。

「喜んで受けさせて頂きますよ、大佐殿」
「有難う御座います、伯爵様、愛してますよ」

優しく触れる唇に、幸せを感じた。

世界一甘いキス、かはわからないけど
それでも、幸せだから、多分、甘い、のは確かで。

メリークリスマス!
夫婦でバカップルなJGですが、宜しければプレゼント代わりに気持ちだけでも貰ってやってください。
素敵なクリスマスでありますように!

31D



あきゅろす。
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