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生まれてきて善かったのか、と言われれば多分渋るぐらいには恵まれて生まれた命では無いのだろう。

自身の作ったフォミクリーが何千何万人という人を殺し、大量のレプリカを作り出した。挙句、世界を滅ぼしかねない事件となった。
それが自分のしたことに無いにしろ、元を辿れば自分に辿り着くことぐらいは重々承知だ。つまりは自分の責任でもあるのだ。
(産まれたばかりの自分に会うことが出来たなら迷うことなく殺すのに)
それさえも出来ない。

生憎と、責任を取る等と自身の命を絶つほど出来た人間でも無かった。また自分は、生きて罪を償う等という行動に出たわけでも無かった。
自分が過去に起こした出来事(ネビリム先生を失ったあの出来事)の罪を忘れたわけでもない。
ただ自分は狡かった。狡かった故にただネビリム先生に許しだけを請おうとした。
それだけの為に国を巻き込んで研究したのに。

(だから本当自分は酷く狡くて正解なのだ)

それなのに。
ずっと変わらず傍にいる可笑しな幼馴染達、自分を先生と呼びたいという赤毛の少年、一緒に悪巧みをしてくれる少女、何もかもを知って責めるでもなく信じてくれた導師、辛かったでしょう、と責めるわけでもなく優しい言葉を掛けてくれる少女達、
そして何より(愛おしい彼)

自分は人に恵まれ過ぎた。
それは、自分には勿体ない程には素晴らしい事で、人の死さえもわからない自分(けれそも本当は分かってきてるんだろ、と赤毛の少年は笑うけれども)には酷く申し訳ないことで。

正直言ってしまえば、重いぐらいには嬉しい、のだと思う。わからないけれども。
ただ、栗毛をツインテールに結ぶ少女の問いかけた「皆を信頼してるんですね」と嬉しそうに言ったその言葉を自身は否定する言葉等無くしている。

だからつまり、

「嬉しいんですよ」
「そうかい、そりゃよかった」
その言葉を聞いて安心した、とガイは笑った。誕生日に死んだ方が善かったなんて言ったら殴ってやろうかと思った、等と続けて、ガイはジェイドへと視線を合わせる。
「産まれてきてくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
触れるだけのキスをして、見つめあう。
ところでプレゼントは無いんですか、等と聞けば、いい歳して年下に強請るなよ、と笑われた。
「邸に馳走を用意してるよ」
「それはありがたいです」
額にキスをして、感謝の気持ちを伝える。仕事も終わりましたしそれでは行きましょうか、と椅子に座っているガイの手を取り優しく引っ張る。
けれども、最後まで聞けよ、と楽しそうに笑うガイに何です、と軽く聞き返せば、瞬間、今度はガイの唇がジェイドの頬へと触れた。驚いてガイを見つめ返せば、悪戯が成功したと云わんばかりに含んだ笑いをして、ガイはジェイドの手を握り返す。

「俺も、プレゼントなんだが」
どうする、と笑うガイに要りますよ、と笑い返した。


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「ということは何してもいいんですよね」
「そうとは言ってないだろう!」




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