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人として軸がブレてる
20XX年2月4日編(後)



「ほら、ここに―」

「悪鬼退散ーーーっっ!!」

「ぐはっ!」

「?!あ、阿部くん?!」



阿部君の頬と手を見事にクリティカルヒットしたのは、見慣れた野球ボールで。
ボールが飛んで来た方向には、泉君と田島君がバットを持って立っていた。
その様子はまるで、「鬼に金棒」だ。



「ちっ、昨日の内に退治しておくべきだったぜ」

「阿部〜っ、高校生がフジュンドーセーコーユーはいけないんだぞ〜!」

「―くっ、貴様ら何の権利があって、んな、ぶほっ!!」

「ひっ」



立ち上がって抗議する阿部君の顔面を、泉君の打球が容赦なく直撃する。



「うっせー、てめぇはさっさと外に出やがれ。
でないと、野球部に、いや、西浦高校に福は訪れねぇ!」

「待てよ、泉。
そんな簡単に外に出られちゃ、当てる楽しみがねぇよ!」

「あほ、ああいう百害あって一利無しなヤツはさっさと葬らなきゃなんだよ。
おい浜田、ボール」

「なんで、オレがこんな役目…」



浜ちゃんが差し出したボールを奪い取り、泉君はヒッティング体勢に入る。



「さぁ、阿部!観念しやがれ!
年貢の納め時だぜっ!!」

「くそっ、オレもここまでか―!」



阿部君の悲痛な声に、オレの身体は勝手に動いた。



「待って、泉君!」

「!!!」



阿部君を庇うように前に立ったオレを見て、泉君は慌ててバットを止めた。



「―三橋、どくんだ。
そいつに情けは無用、お前に庇われるようなまともな人間じゃねぇ。
言わば邪気の塊、特にお前にとっては心身共に毒でしかねぇんだよ」

「そんなこと、ないっ」



だって、阿部君は大事なバッテリーだ。
一緒に全国制覇を目指す仲間だ。
それに、



「阿部くん、はっ、ただ『豆まき』したい、だけっなんだっ」

「「「………」」」

「三橋…、」



再び立ち上がった阿部君が、優しくオレの肩を叩いた。



「オレを理解してくれてんのは、お前だけだよ」

「阿部、くん」

「………ふーん、分かった。
じゃ、三橋の言う通り『豆まき』しようぜ」

「泉君っ!」

「ただし、野球部全員、でな」

「なっ!!」



泉君、何て優しいんだろう。
阿部君も突然の展開に、固まるほど感動してるようだ。



「ちょっ、待てっ!
オレは―」

「良かったね、阿部くん!
みんなで、『豆まき』しよう、ね」

「うっ…、おま、そのレアスマイルは反則…」

「あっ、阿部く、鼻から、血…だ、大丈夫?!」

「そうそう!
大勢の方が楽しいもんな!」

「だな。
あ、鬼は言い出しっぺのてめぇと浜田な」

「え?!なんでオレまで?!!」



感動で逆上せちゃった阿部君が、鼻血を出すハプニングもあったけど。
部活後、賑やかな豆まき大会は本当に盛り上がった。
意に反して鬼になった阿部君は、意外と楽しげで。
しかも、何故かトランクス一枚の姿で、腕を広げて、オレの豆が欲しいって叫びながら、すごい形相で追っかけてきた。
だから、オレは泉君の提案通り、手一杯の豆を思い切り投げてあげた。
それでも足りないって阿部君がまたオレを追いかけようとしたから。
今度は、栄口君と田島君が持っていた豆を全部、阿部君の口に頬張らせたりして。
他の皆は、少し離れた所から阿部君目掛けて豆を投げてた。
浜ちゃんはただ茫然と阿部君を見ていたら、泉君に鬼らしくしろって怒られて。

一日いろいろあったけど。
みんなと遊べて、オレはすごく楽しかった。














「…くっそ〜、泉の野郎ナメたマネしやがって。
来年はぜってー三橋のスケジュール抑えて、ラブホの予約もしておく…!
あ、とりあえず、今からメールで三橋は確保しておくか♪」





(to be continued for next year…?)





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