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SONGS
友達でいいから(ミズ⇒サカ)
『友達でいいから』



君にしてあげられること
指折り数えてみたけれど
まだ今も片手にさえ足りないくらい…





「まだまだガキだよね〜、オレたちって」


オレは感慨深い気持ちで言った。
のに…


「どした?
親にでも叱られたか?」


と、花井は的ハズレなことを言うし、


「ほっとけ、花井。
いつもの戯言だ」


って、阿部は相変わらず人をバカにしてるし。


あのねぇ、オレだっていろいろ悩むことだってあるんだよ?
そんな万年お気楽人間みたいなイメージ、勝手にもたないでよ…。

そう、オレは真剣に考えていた。
大切な人にしてあげたいことは山程あるのに、本当に叶えてあげられることなんてほんの少ししかない。
無力だと思う。
それなのに、好きだという気持ちだけ募っていく。
子供だなって痛感する。


「お〜い、ちょっとわりぃ」


と、そこに意中のヒトが突然やってきた。


「あれ〜、栄口。
どしたのどしたの?」


オレはいつもと変わらないお調子者の態度で応じる。
だから、君には分かんないだろ?
今、オレがどんだけ緊張しているか、なんて…。


「5時限め英語なんだけどさ、辞書忘れちゃって」


3組は今日英語ないんだよね、と栄口は苦笑いした。


「あ、オレ持って―」

「ほい」


オレが答える間に、阿部は自分の辞書を差し出した。

〜〜阿部のヤツ!いらんことをー!!!


「悪い、終わったらすぐ返しに来るから」

「今日はもう使わねぇから、部活ん時で良いよ」

「サンキュ!
じゃ、後で」


想いビトはオレを振り返ることなく、あっという間に去ってしまった。

せっかくのチャンスを〜…。
―許すまじ、阿部隆也!!!


「……おい、阿部。
なんか珍しく水谷の顔、怖いんだけど」

「あ?
腹でも痛いんじゃね?」


こうしてまた、オレは栄口にしてあげられることが減った。

大切な人に何かをしてあげるって気持ちだけじゃなくて、運やタイミングも必要なのかな…。
少なくとも、阿部だけには気をつけておこう…。


191021 up


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あきゅろす。
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