[携帯モード] [URL送信]

SONGS
有罪

『有罪』



巡り逢ったことが
  既に有罪なのに―



禁じられた恋―
なんて陳腐な表現だろう。
母親が見ていたドラマの売り文句を聞いて、以前のオレは呆れていた。
恋に他人の許しが必要なんて馬鹿げてる。

今でもそう思う。
けれど。
今のオレたちの関係はどうだろう。
男同士なんて異端には違いない。
ならばこれは『禁じられた恋』、なのだろうか。
やはり、周囲に許しを請わなくてはいけないのだろうか。
そもそも、許す人なんているだろうか。
この恋が禁じられたのなら…。
その時オレは、三橋は、どうするのだろう。

静寂な夜の部室で、三橋を背後から腕の中に閉じ込めたまま、そんな下らないことを考えていた。
急に抱き締めたから、三橋は驚いてしばし硬直していたが、時間が経つにつれ落ち着いたのか、オレの腕を遠慮がちに掴む。
その手に込められた力が愛しい。

もし、三橋と別れる日が来たら…。


「あ、あべく、ん…?」


ずっと黙ったままのオレを、三橋は不思議そうな顔をして振り返る。
いつもはすぐに目を逸らすのに、こういう時は決まって真直ぐな視線を寄越す。


「ど…した、の?」

「三橋…」


もし、二人が一緒にいることが罪なのだとしたら―


「この世界とオレ、お前はどっちを取る?」

「………」


すげぇ格好悪い。
酷い男だよな、オレ。
自分の不安を消したいために、三橋に不安を与えている。


「それ…は、」

「?」

「傍にいちゃ、いけないって こと…?」


三橋の茶色い瞳が揺らめく。

あ…、ダメだ。


「わり、何でもない。
今の忘れて、何でもねぇから」


そう言って、三橋を強く抱き締めた。
あまりにも悲しい顔をするから、オレの方が堪らなくなった。
もういいや、とも思えた。
三橋も、先程よりも少し強く掴み返してくれる。
それで充分だ。


「あ、あべくん」

「…ん?」

「ごめん、ね…」


「何が?」


「…オレ、きっと それで、も 傍にいたい から…。
だって…」

もう、君に巡り逢ってしまったから―


「ごめん…」


そこは謝るトコロじゃないだろ。

おかしくて、嬉しくて、切なくて。
オレは三橋の肩に顔を埋めた。


「いいよ、オレもおんなじだ」


たとえ罪だとしても、離れるなんてできない。

君の身体も、君の温度も、君の声も、手を伸ばせばすぐに届いてしまうから。



071018 up


[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!