[携帯モード] [URL送信]

アベミハ獣医シリーズ(完結)
閑話


新郎の控え室で待たされるオレは、非常に居心地が悪かった。
身内でもないのにこのような場所に居るのは、なかなか落ち着けずにいる水谷のせいだ。
その当の本人はというと、先ほどから部屋を何週回っただろう。
大学時代の親友(と水谷は言う)としてスピーチするようオレは呼ばれたが、一緒に担当となった同期の阿部はまだ到着しない。
きっと、それで焦っているのだろうが、あの理系男が遅刻などすることもないだろう。



「少しは落ち着いて座ったらどうだ、水谷。
阿部ならちゃんと来るって」

「え?何、花井?阿部がどうかした?」



予想外の返事に、オレは首を傾げる。



「何だよ、阿部のこと心配してたんじゃないのか?」

「何で阿部の心配しなきゃなんないのさ!
今日の主役はオレだよ〜」



何だか会話が噛み合わない。



「じゃ、何さっきからうろうろしてんだよ。
犬みてえだぞ」



すると、よくぞ聞いてくれたといわんばかりに、急にオレにしがみついてきた。



「だってさ、千代ちゃんのウェディングドレス姿だよ!
初めて見るんだよ!!
どうしよ、オレ。
鼻血吹いて倒れたりしたら・・・」


「・・・」

「あ、待てよ!それくらいならいいけど、同僚や先輩方までもしかしたら千代ちゃんに惚れ直したりして・・・。
どうしよ〜、花井!
オレ、結婚してもすっごい不安だよ〜!!」

「・・・・・・オレは、お前の頭の方が心配だよ・・・」



こんなヤツの親友なんて思われるのは嫌かもしれない。
オレは、今更ながら本気で帰りたくなっていた。




080830 up
(111026 revised)



[*前へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!