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アベミハ大学生シリーズ
8)
「―私ね、ドライブが好きなんだ。
お酒も好きだけれど静かに飲む方が良いから、ああいう席はちょっと苦手。
早く店から出たかったの。
それだけよ」


彼女の発言は少し意外だった。
いつも飲み会では、そんな素振りは見せなかったから。


「だから、君をカモにしたってわけ。
だって、あんなにあからさまに態度に出てちゃあ、ねぇ。
皆の為にも連れ出したくなるってモンよ」


また触れられたくないところに話が戻ってしまった。
そんなに態度に出てたかな…。

気がつけば、彼女の運転は先程とは全く違い穏やかだった。
多分、いつもはこういう運転をするのだろう。


「大好きな野球に身が入らないくらいの一大事?」

「は?」


…あぁ、練習の時の。

オレは彼女に冷かされた時のことを思い出し、段々恥ずかしくなってきた。
そんな前から、三橋一人に振り回されているのを他人に観察されていたのかと思うと、なんだかいたたまれない気持ちになってきた。

もうこれ以上は観察されたくなかったので、窓を開けて夜の町並に顔を向ける。
表情を読まれないと思えただけでも、少し落ち着く。


「カノジョ?」


まだ話は続いていたようだ。
オレは、この類の質問が一番嫌いだ。
急に心の温度が下がっていく。


「………違いますよ」


それしか答えられない。
木田は一言、ふうん、とだけ返事をした。


三橋は、当然彼女ではない。
もちろん、友人以上には違いない。

愛しいと思う。
男であれ女であれ、もしも三橋にオレ以上に親しい存在が現れればきっと許せないだろう。
二人が交わす言葉も熱も、特別な存在であることを証明している。
三橋も同じ気持ちでいてくれていると思っている。

しかし、「恋人」と呼ぶことにはオレ自身が違和感を覚えた。
そんな簡単な関係のように思えなくて、オレ達はそんなんじゃないんだって抗う自分がいて…。
だからと言って、今のオレ達の関係を表せる別の言葉を、オレはまだ見つけ出せない。
三橋に求めるものは恋人のそれと変わりないようにも思えるが、それでも周囲でよく目にする恋愛とは、やはり違うような気がする。


男同士だから?
有り得ない関係だから?






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