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アベミハ大学生シリーズ
4)
三橋のヤツ、声が小さいっつーの。
あんなんで聞こえる訳ねぇだろ。


自分に非があるくせに最後の言葉を聞き取れなかったことで三橋を責めたくなる。
練習中、三橋のことばかり考えていた。
バッティング練習なんか、ほとんどストレス解消かのように力いっぱいバットを振り回してしまった。


アイツ、何て言ったんだ?
だいたい、こんなことくらいで拗ねんなよ…。


三橋は最近、「拗ねる」ということを覚えた。
ただ、本人は認識していないのが厄介で、コントロールが侭ならない自分の感情に振り回らせているようだ。
おかげでこの間、些細な事で久しぶりに泣かれて、かなり焦ったりした。
その感情はオレに特別な思いがあるからで、それはそれで嬉しいのだが・・・。


「OBが来てるってのに余裕だね、タカ君は」


バッティング練習をしている背後から、先輩マネージャーの木田に冷やかされた。
その言葉遣いはモモカンを思い出す。
しかし、容姿は打って変わって小柄でスレンダーな上、ショートヘアの童顔だ。

そういや、この人に呼ばれて三橋の言葉を聞き逃したんだっけ。

逃げた自分を棚上げにして、そんな八つ当たりっぽいことを思った。
ちなみに、彼女が使うオレの呼び名も気に入らない。
まるでガキ扱いだ。
入部当初、何度か抗議をしたが聞き入れてもらえなかった。


「別に。
真面目にやってるっスよ」


そう返すと意味あり気に笑いながら、顔を近づけてきたので驚いた。


「ず〜っとココに皺が寄ってるよ」


彼女は何の躊躇いもなく、次にはオレの眉間を突いてきたのでちょっと腹が立った。


「・・・・・・大きなお世話です」


彼女の手を軽く払いのける。
この人は、どうにも苦手だ。
しかし、木田は気にした風もなく、怪我だけはしないようにねと笑ったままベンチへと消えた。

何が言いたかったんだ、あの人は?


勢いよく飛んでくる白球をヒッティングしながら、また三橋を思う。
苛立ちが木田に向いた分、今度は三橋には純粋に申し訳ない気持ちが湧いてくる。


まさか、泣いてたりしてないよな……。
三橋に泣かれるのは正直まいる。
惚れた弱みか、柄にもなくオロオロしてしまう。
しかもネガティブ思考は相変わらず顕在で、それで拗ねるのだから大変だ。

まぁ、できるだけ早く帰りゃ機嫌なんてすぐに直すだろ。

自分を落ち着かせる為、そう思い込もうと躍起になって打ち込んでいたら、「無茶苦茶振り回すな、このバカ!!」とOBに小突かれてしまった。




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