01
俺の苦労は、一本の電話によって起きてしまった。
プルル……
「もしもし」
『あ、明良?久しぶりね』
「姉さんか…どうして家の電話に?携帯ですれば良いだろ?」
『まぁちょっと事情がね』
俺の姉さん、汐田舞。結婚したから名字はもちろん違う。今まで連絡を取り合っていなかったから久しぶりで、最初誰だか分からなかった。
今になって俺に連絡してきたっていうことは、なんか相談事か?
『あんたの思った通り!実はね、頼みたい事があるのよ』
「それは別に良いけど……人の心読まないで頂けますか……」
『やーね!あんたが分かりやすいのよ!』
そんな俺って分かりやすいのか?まぁ良いか。
『でねー頼みたいってのが……』
「宜しく明良!」
「……宜しくお願いします」
「…………」
姉の息子を預かってしまった……。
『私たちが旅行に行ってる間、預かってほしいのよ』
「何を?」
『私の息子を』
「お断りしま…」
『預かるよね?ん?お姉様に楯突くのかな?』
「……分かったよ(泣)」
はぁ……仕事も大変だって言うのに、育ち盛りの子どもを預かる俺って……まぁ高校生だから面倒になる訳でもないしな。
それにしても久々だなぁ。確か那智、君だっけ?赤ちゃんの頃に会ったから俺の事は分からないだろうな。
in リビング
「………」
「………」
な、何も話すことがねぇ!
チクタク…チクタクと時計の秒針が虚しく耳に聞こえてくる。
そのループ地獄から抜け出そうと、俺の口が動いていた。
「そ、そういえば那智君はどの高校なんだ?」
「……白神高校です」
「白神高かぁ。……こっから遠くないか?つーか、あっちの家から自転車じゃもっとかかるんじゃ……」
「いつも電車か車なんで」
「あ、そうか……」
ん?じゃあ明日は何で……
「…………」
那智君も俺と同じ事を考えてたのか、顔を下に向ける。何だか泣きそうな雰囲気なのは気のせいか!?
「だ、大丈夫だって!俺が明日は送ってってやるから!な?」
俺は慌ててそう言うと、どうもすみません、と言って深々と頭を下げた。
何やってんだ、俺……。
「ん、っと…夕飯どうすっか……何か食べたい物あるか?」
「…別に」
「別にって……」
お前は沢尻○○カか!
「っていうか、姉さ…お母さんはいつ頃帰ってくるんだ?」
「……多分、1ヶ月くらい」
「なんだ1ヶ月k……」
なん、だと……?
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