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novel
feel
いつもの時間
ヘンリーが目を覚ます時間
私は彼が起きてくるのを散歩を待つ犬の様にソワソワして待っていた
なのに、時計の長針が1から2、2から3へとどんどん進むのに対し一向にヘンリリーが起きてくる様子はない
堪り兼ね寝室の戸を開いてヘンリーの枕元に足を進めた
「ヘンリー、時間だ起きないといけない」
そう声をかけ彼の顔を覗き込む
「…ヴォルダー…」
酷いダミ声で返事が返ってくる
顔を真っ赤に染めてゼェゼェと口で呼吸している、目には涙までためて…
いかにも辛そうな様子でヘンリーはベッドに寝ていた
「どうした?」
不思議に思い顔を覗き込んだ私にヘンリーは咳を浴びせた
「ごめ…風邪をごじらぜだみだいで」
「今日は会社には行かないのか?」
「…行げない」
ヘンリーは受話器を手にして電話をかける
「じゃあ今日は1日一緒に居られるんだな」
顔を綻ばせる私に対して、会社への電話を終えたヘンリーは
「頼むがら、ぞっとしでおいでくれ…」
とベッドの中で丸くなり動かなくなってしまった
私は彼の注意を惹くために騒いでみる
いつもなら側で騒ぐと怒るのに怒りもしないので仕
方なく私は寝室を後にした

―つまらない
ヘンリーが良くならなければ構ってもらえない事を理解し、隣の301号室の戸を叩いた
暫くすると、301号室の住人ジェイムスが顔を出す
「ウォルター、何か?」
ヘンリーの事をジェイムスに話し
どうしたらヘンリーが元気になるかを聞きに来た訳だが…
「つまり、ヘンリーを楽にさせてあげたいんだな…
簡単だ、君の両手を彼の首にそえればいい
そうすれば苦しみから解放されるだろう」
聞く相手を間違えていた
「遠慮しておこう」
そこへ、ハリーがチャネリングストーンを持って現れる
「グレイ達に治してもらうのが一番早いだろう」
「うち(SH4)は彼等とは関与しない方向でいる、気持ちだけ貰っておこう」
丁寧に断ると301号室を後にした

宛もなく、ハイツの中を徘徊していた
どれ程たったか気が付くといつの間にか時計が13時を回っていた
そう言えば朝から何も口にしていないと腹部を擦る
いつもならヘンリーが用意してくれるからだ
食べなくても死にはしないとは思うが
食べるという習慣をつけられた体が食事を要求する
302号室に戻り冷蔵庫を開ける
中はほとんど空だった

―買いに行くべきか?
ヘンリーの財布を拝借しコートのポケットに放り込むと
足早にハイツの玄関まで来たのにそこから外へは足を踏み出すのに躊躇った
この体になってからサウスアッシュフィールド以外の世界から出たことが無かった
どうなってしまうか想像もつかない
「ウォルターじゃない」
そんな時、私の後ろからミス・ガルビンがやって来た
「ミス・ガルビン…」
「こんな所で何をしているの?」
「外に…出たいんだが」
渋っている私の背をミス・ガルビンは躊躇なく突き飛ばした
「!」
「ほら、出られたじゃない」
唖然とする私に彼女は悪戯っぽく笑う
むしろ悪意を感じるが…
今はそれどころではないとスーパーに急いだ
途中シンシアに攻撃されたがこの程度なら放っておいても大丈夫と思いそのままにした

生きていた時を思い出しながら食材を集め
302号室に帰った


「ヘンリー」
全てを終えた時にはもうディナーの時間だった
「ヘンリー?」
ヘンリーに声をかけると彼はうっすらと目を開いた
「雑炊を作った、食べろ」
「…ウォルターが?…変なもの…入ってないよな」
元気は無いが声はダミ声ではなくなっている
「失礼だな、大学に居たときは炊事、洗濯全て自分でやっていた」
疑うヘンリーの口に無理やり雑炊をスプーンで押し込んでやった
「うぶ…ゴホっ熱い…やめてくれ」
「お前が悪いんだ」
「せめて、冷ましてから…」
いつもとは違った力のないヘンリーの目に免じてそれ以上のお仕置きはまた今度にすることにする
雛のように食事するヘンリーは愛らしい
半分食べて疲れたのか再び目を閉じてしまった
「ヘンリーまだ残っている」
「…ごめん…もう食べられない…」
しんどそうに肩で息をしている
―熱があるのか?
額に手を当ててやると、ヘンリーは火照った手を重ねて少し微笑んだ
「…冷たくて気持ちがいいな…こうして居てくれると嬉しいな…」
初めて、ヘンリーに頼られた気がする
とても嬉しくて
「ああ、良いだろう」

私はヘンリーが満足するまでずっとそうしていた

ヘンリーが風邪で倒れて大ピンチなお話
ヲルターは面倒見が良かったらいいななんておもいます


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あきゅろす。
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