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ふ、と目が覚めると、
知らない香りに包まれていた。





「っ……?!」





ばっ、と跳ね起きると、
見たこともないような部屋に、
物がごちゃごちゃと置いてある。
南蛮の物もある…南蛮人か………?
ふわふわの少し高くなっている布団。
…………一体どこなんだ、此処は。
体の節々が痛い…のはいつもか。


体を起こして、気付く。
武器が一つとして無くなっている。


普段だったら気が付くんだけど。
油断してたからな…厄介だ。










「…あ、起きた?」





手に湯呑みを持った女が
木の扉からすっ、と出て来る。





「………………誰。」


「うん、こっちが聞きたいんだけど。」


「……………」


「帰ってきたら人が倒れてるし、
怪我はしてるし、武器持ってるしで
色々とこっちは大変だったんだから。
タイムスリップでもしてきたの?貴方。」


「………………信じると思う?」


「別に。思わないし、信じなくて良い。」


「…………………武器は。」


「え?あぁ、そこ。」





女の指差す方向に目を向ければ、
大量の見慣れた銀の刃が。


ひとつ手に取り、女に向ける。


女は怯えた様子も無く、こちらを見る。
忍………か?それともただの馬鹿か?





「……アンタ…忍?」


「ううん。」


「…………そう。」





ただの馬鹿か。


女はふと笑うと湯呑みを下に置いた。
この女、一体何なのか分からない。





「別に危害を加えるつもりは無いよ。
飲みたく無いのなら飲まなくても良い。
何かあったら呼んで。隣に居るからね。」










カチャ、と軽い音を立て、
固く閉まった扉をじっと見る。


危害を加えるつもりは無い?
なら何故俺は此処に居るんだ?


帰ってきたらいきなり、とか、
怪我とかなんとか言ってたけど…
タイムスリップ…?タイム…って、
確か南蛮話で時間って意味…?
何、それ。





ギシッ、と音を立てる布団から降り、
湯呑みの中身をそっと覗き込むと、
濁った薄い黄の色の水が入っていた。
……………これって、飲み物なの?
飲みたく無いならって言うか、
飲める物には見えないんだけど……


匂いを嗅ぐ。何処かで嗅いだ事…あ、
……………玉蜀黍?いや、でも…


…舌先で軽くその水を舐める。
熱いけど飲めない物ではなさそう…だ。





「…………何なの、一体。」





その味噌汁…じゃないから、えーと、
玉蜀黍汁…?を飲み下しながら、
音を立てずに布団に腰掛ける。


下を向き、下手な手当を見る。
包帯は無駄に使われてるし、
まぁきつい分、まだましなんだけど、
痛いし、乾くし。…慣れたけど。
…身体が軽く拭いてある。
これも、あの女なのだろうか。


部屋の中を見回す。
やはり、見たことも無い。


ただ、あの無駄に年上ぶる女が
一生懸命になって下手くそな手で
俺に包帯を巻いている姿を想像すると、
なんだか少しだけ笑えた。










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