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つらつらと悪態をつきながら
颯爽と…いや、足を引きずりながら
森を駆け抜ける一つの影。
…いや、駆け抜けるというのは
本当は正しくないかもしれない。
正確には、…飛び駆ける、だろうか?
彼は真田忍隊…別名、真田十勇士隊長。

…………そう、彼の名は、猿飛佐助。





「…っくそ、ヘマしたか…」





彼が悪態をついている相手は、
今回偵察に入った城の忍隊だ。
思った以上に薄手な警備に、
彼も少しおかしいとは感じたのだが。
…それを侮ったのが間違いだった。

真田十勇士の長とは言え失敗はする。
それが極端に少ないと言うだけで、
二年に一度位のペースで、失敗はする。
…あー、やばいな。けっこう傷深い。
さっき足ざっくりいったからなぁ…、
ふざけんなあの忍次は絶対殺る………
…なんて物騒な事を思いながらも、
また重い足を引きずりながら走る。

と、いきなり敵の気配が消えた。





「撒いた、か?」





だと、良いんだけど。
やっと一息、と近くの枝に腰を下ろす。
…月が綺麗だ。満月ではないけれど。
あと、少しなんだけどなぁ、と思い、
ふと笑う。まるで、俺みたいだ。
もう、あと、少し、なんだけどなぁ。

最近寝ていないから疲労が溜まっている。
なんて、忍らしくない考えだろうと、
思ってから後悔する。嗚呼、馬鹿な俺。
心は、棄ててきた筈なんだけど。
だって、俺は人じゃないから。
俺は、忍。主に尽くす唯一の人形だ。





「さぁて、そろそろ行かないと
もう旦那に怒られるかな…………よし。」





彼は枝からすっと立ち上がる。
………いや、立ち上がった筈だった。
足場の安定しない根本の腐った枝が、
ぐらりと揺れて折れ曲がったのである。
普段ならなんて事のない高さなのだが、
(それでも優に15mはあるだろう。)
なんせ疲れている身。更に不運な事に、
怪我の足から落ちてしまったのだ。

死ぬ。

…その言葉が頭を過ぎる。





そして彼は意識を失った。










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あきゅろす。
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