斑雪
殴るときはグーで
「いや…だっ!」
男は無造作に私の隊服を乱してスカーフを剥ぎとった。
「いいねェ、その顔」
叫ぼうとしても声が震えてしまう。
犯人を捕まえてやろうとしても体が動かない。
そして視界がぼやける…これは涙なのだろうか。
相手が私のブラウスに手を入れ、掻き乱そうとした時。
…刹那
「おんし、わしの妹に何晒してくれてるんじゃ?」
バコンと音がして目の前の天人が崩れ、向こうには…
「あ……た、辰兄!?」
私の兄。坂本辰馬が立っていた。
見事に着こなしたコート姿で、右手には拳が握られている。
身長が高い彼が、何故か更に大きく見えた。
「久しぶりじゃの、燐。大丈夫だったかの?」
笑う辰馬は私の頭をバシバシて叩く。
痛いけど安心できる…。
「……」
「またずいぶんと乱されたのー」
彼はお母さんのように私の隊服を整えてくれて。
「…ありがとう。」
「アッハッハ、全然構わんぜよ!」
彼は私の手を握って笑いかけてきた。
「うー…ん、燐の仕事場でゆっくり話したいぜよ」
殴るときはグーで
グー…痛そう。
+++++
燐ちゃんには兄さんが居たわけです。
それもあの…もっさんです。
二人については後々書いていこうと思っています。
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