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こねことおおかみ/完結
こねこは動物好き

▽▽▽▽▽

「お、なんだ珍しく全員そろってるなぁ。うし、HR始めんぞ」


空席のない教室に、武下は満足げに頷く。

サボり癖が目に付いた二人も、最近は遅刻もなく教室へ姿を現す。

号令に気づくこともなく机に突っ伏して寝ている宗昭もその一人だ。
彼は毎朝潤んだ目で凛に見上げられ「一緒に学校行こ…?」と袖を引かれては、なぜだか断ることが出来ずにこうして出席率を上げていた。


隣に座る亮平はというと、自分の前の席である馨をペンでつついたり、ちょっかいを出しては反応を楽しんでいる。
彼も最近ではこれが楽しくて出席しているようなものだった。


「まず連絡な。5月終わりに新入生親睦遠足があっから4,5人でグループ作れ。んじゃ、HR終〜了。仲良くしろよ…俺は忙しいんだ」


「早っ!開始3分も経ってねぇよタケちゃん」

すかさず指摘した馨の声に振り返った武下は「俺の3分はお前らにくてれやるほど安くねぇんだよ」という教師にあるまじきセリフを残して姿を消す。

「信じられねぇ…生徒に向き合うのが仕事だろタケちゃんよ…」

クラスメイトは同意するように笑う。
皆、武下の性格は承知している。ふざけた言葉で生徒を盛り上げるのは彼の趣味みたいなもので、その人情味ある人柄は生徒から人気が高い。


突然、ぼけーと窓の外を眺めていた凛の視線が教室へと移った。
武下は既にいなかったが、その目は黒板に残された文字「親睦遠足 グループ4,5人」を捉えている。

凛の脳内へゆったりと文字が浸透する


えんそく・・・・遠足・・・

自然・・・・ 森…?


「…どうぶつっ!」



凛は万歳をするように両手を天に掲げ、高らかにそう声を発した。



((((ど、・・・・どうぶつ・・・?))))

クラスメイト達が凛の言葉に首をかしげる中、
後ろを振り返った凛は未だ寝ている宗昭の頭をわしわしと撫ぜる。


「むーくんむーくんっ!!」

「んぁ…」

「起きて起きてむーくん」

「んだよ・・・どした」


大きな欠伸をしながら宗昭が体を起こした。
凛に好き勝手された頭はボサボサで、目は半分しか開いてないが
そんな瞬間さえイケメン度が下がらないのがむかつくなと、馨は二人の様子を見守る。


「むーくん、遠足だって!遠足だよ〜わぁい!」


「・・・・・」


初めて見るテンションの高い凛に寝起きの宗昭は反応できない。


「・・・遠足・・・?」

状況を把握しきれない宗昭に、隣から亮平が説明に入った。

「おはよぉ〜柚。 なんか〜今度遠足があるってタケちゃんが言ったとたんにスズちゃんこ〜んななっちゃったよ」

「・・・・・」

こんな、というのは、
目をキラキラさせて小躍りしている状態のことだ。

遠足で喜ぶなんていかにも凛らしい。リュックでもなんでも似合いそうだ。


しかしいくら凛には似合っていようとも、
高校生にもなって遠足などとダルくて行ってらんねぇというのが宗昭の正直な感想である。
大体自分達みたいな不良が、仲良く遠足なんて行ってたら笑い種になるだけじゃねぇか。


「楽しみだね、むーくん!」

「・・・・・」

まっすぐな視線と浮かれた言葉。そこに含まれた嫌な予感に、宗昭の眉間がぴくりと痙攣する


「・・・・晴れるかなぁ・・・。あ、お昼も一緒に食べようねぇ」


そう、凛の中で宗昭が不参加という選択肢などこれっぽっちもなかった。

彼の脳内ではおそらく、すでにレジャーシートの上で仲良くお弁当を広げるところまで妄想が進んでいるのだろう。


「…マジかよ…」

「むーくんはバナナおやつに入れるタイプ?」

宗昭の予感は的中していた。







「ねえかおるちゃん、柚行かないって言えると思う〜?」

「無理だな。凛のお願いを断るなんて、今の柚羅には出来ないだろ」

「でも遠足だよ〜?スズちゃんに甘甘の柚でもさぁ〜似合わなすぎて笑える」

「見ろ、あの凛の目を。楽しみすぎてキラキラ通り越してもう脳内で遠足してるぞ」

「・・・・・そうだね」




隣で勝手な会話がされる中で、
渦中の宗昭はというと


「ねぇむーくん、…くまさん捕まえられる?」


「「「・・・・・・・・」」」

予想のはるか上を飛ぶ凛の妄想に、もう何も言えないでいるのだった。


<*わんにゃん#>

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あきゅろす。
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