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こねことおおかみ/完結
どなたですか
「おや、この教室にはとても可愛らしい猫がいるんですね」


担任もとい馬に蹴られるのも恐れぬ特攻隊長武下により
ようやく1−Cへ平和がもたらされたと全員がほっと安堵した時、やわらかくてとてもよく通る声が教室に響いた。


「・・・・・・・」

突如現れた傍に立つ存在を凛がそろそろと見上げると、クラスメイトではないスーツ姿のその男は眼鏡越しにふんわりと優しく笑ってこちらを見ている。

その邪気のない柔らかい笑みに凛はただ見つめていた。







え、何、誰・・・?


と、見知らぬ男のさり気なさ過ぎる登場に教室がざわめく。


「あー・・・ほら、自己紹介をしてくれ」

「そうでしたね」


武下に促された男は凛の傍に立ったまま体を少しずらし教室全体を見渡せるように目線を上げる。


「初めまして。このクラスの副担任を受け持つことになりました岩倉壮一です。どうぞよろしく」

ふわりと笑みを浮かべる男。
少しウェーブかかった黒髪を自然に後ろへ流し、ノンフレームの眼鏡が教師らしさを唯一主張しているが、その奥の目はまだ青年っぽさを滲ませていた。

「・・・・タケちゃん、副担って別にいたような気がするんだけど。あのどてっぱらのモジーは俺の幻だったとか?」

「おまえの幻は夢がないな。どうせなら還暦間近のベテラン教師のことじゃなくて高校男児らしくセクシーな人妻との危険な逢引くらい夢見る男になれ」


もうすぐ年度末である。時期はずれの赴任に疑問を抱いたクラスメイトが果敢に挑んだが見事に武下によって打ち返された。


「タケちゃん・・・容赦ねぇな・・・」としょんぼりしたクラスメイトにやさしく声がかかった。

「副担任の門司(もじ)先生がぎっくり腰になってしまったんです。本当は私は春からここに勤める予定だったのですが、門司先生がこの際もう俺は引退してセカンドライフを謳歌してやると言って爽やかに辞任してしまいましたので、その引継ぎとして赴任してきたんですよ」


壮一の少し困ったように笑う姿に、ドS武下の鞭によって打たれ疲れていた1−Cのいたいけなハートはきゅんとつかまれた。

「・・・・っさよならモジー!初登場ながら名前だけって切ない扱いでごめん!先生のことは忘れないからね!そしてようこそ岩倉先生!」

「岩倉せんせー!」


なんだか分からないうちに岩倉株急上昇である。


「先生だなんて・・・・。私は武下先生のような立派な先生には到底及ばないまだまだ未熟者ですから。恥ずかしいですね」


「けっ謙虚・・・っ!そんな先生は今日から俺たちの兄貴だ!壮一兄さん!いや、壮兄っ」

「壮兄ーーっ!」

盛り上がるクラス


「ははは、照れますね」





武下がキレるまで後数秒______。





<*わんにゃん#>

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あきゅろす。
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