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#お題スパーダと




何が起きたか分からない、
そんな間抜けな顔をした少女が、尻餅をついて唖然と上を見上げていた。
彼女の視線の先には、柔らかな緑の髪を揺らしてそれを見下ろす少年。その瞳はじりりとした怒りで染め上がっていた。

「いい加減にしやがれ!!」

少年、スパーダは更に声高に叫び、少女の胸ぐらを掴み上げる。
しかし少女、テテオは少しだけ苦しそうに眉根を寄せるだけだった。その瞳はスパーダに訴えかけていた、何をそんなに怒っているの、と。
それが更に彼の気を逆撫でしたのか、握る拳に力がこもる。

「お前、いつからそうなっちまったんだよ!」
「私は私だよ、ずっと私のままだ」

紅色の瞳は揺るぐことなく、スパーダを見上げていた。
いつからだ、この少女がこんな真っ直ぐな瞳をするようになったのは。真っ直ぐ遠くを見つめるようになったのは。

始めの頃はまるで焦点があっていないかのようなぼんやりとした目をする奴だと思って見ていた。しかし、その瞳は確かに澄んでいて、生まれ落ちたばかりの赤子のように自分の近くを楽しげに見渡してばかりいた。
誰かと目が合えば、しっかりとその人間を見つめて目を丸くして、嬉しそうに瞳を揺らした。
“テテオ”は確かに自分達の傍にいた。

「私は、ずっと此処にいたよ」

ねぇ本当にどうかしたのスパーダ、テテオは尚も変わらぬ瞳を寄越す。
そんなもんはこっちの台詞だ、ギリと食い縛った歯が嫌な音をたてた。

少女は変わった、次第に世界へ目を向けるようになった。そしてその瞳は、世界ばっかりを慈しむように映すようになった。
それは、少女の中で“テテオ”という存在の位置が変わってしまったからだ。


ただの少女でいられなくなった、何故なら、“テテオ”はディセンダーだったから。


ディセンダーだと知れた少女は、いつしか世界と対等の場所に立っているようになった。“俺達”は、少女の中で世界の一部になっていた。

そんな違和感をスパーダが懸念し始めて暫くしないうちに、今日が訪れた。
空に浮かぶ太陽に似ても似つかない漆黒に淀んだ異次元を、テテオは見つめてこう言った。

「私の役目も、あれと一緒に終わるんだ」

これで世界は救われるね、
テテオの真っ直ぐ世界しか見つめない瞳に、スパーダは何かが千切れる音を聞いた。
刹那、思いきりその肩を突飛ばして、驚きに目を見開く彼女の上に覆い被さる。無理矢理にでも自分を見つめてほしかった、世界から目をそらさせたかった。

「お前は、誰なんだよ…!」

悲痛な響きの彼の声音、テテオは透き通った紅の瞳を更に更に大きく見開く。

ねぇ、何を言ってるの
私は私だよ
私は此処にいるよ
ねぇ、本当だよ

なのに、ねぇ
どうしてそんなに苦しそうに、泣いているの


「スパー、ダ…」

彼の頬を伝う水の名前をテテオは知っていた。悲しい時に溢れるもの、辛いときに零れるもの。
泣いたときに、ながれるもの。


「世界が救われれば皆は幸せになれるのに」

貴方も幸せになれるのに

今のテテオには分からなかった。世界が救われることは良いことで、だから私は世界を救うのに、なのに目の前の彼は泣いている。
世界を救うことは、彼の幸せの保証ではないの?

「だから、お前は馬鹿だってんだよ」





ねぇ、なら私を此処まで動かしていたものはなに?









(真っ直ぐ過ぎる世界のために生まれた少女は)(いつしか本当に大切なものを世界に溶かしてしまった)


_____
ディセンダーだと自覚してから、自分を世界を救う存在と固定してしまったために
大事な人達まで“この世界”という枠に組み込んでしまい、世界を救う(自分が犠牲になる(?))事が皆にとって最も良いことだと思い込んでしまっていた。という話←ややこしい
始めは仲間達を中心に守りたかったものが、次第に世界を中心にと意識がすり変わってしまっていた、みたいなかんじです。よくわかりませんね←
こういう不安定なディセンダーの状態をいち早く見つけ出すのはスパーダだと思います。



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あきゅろす。
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