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@ガイと



「アルプスいちまんじゃくやろうよ」
「ごめんな、遠慮しとくよ」
「みかんのはな」
「いや、それもちょっと…」
「おーてーらーのーおーしょうさんがー」
「どぅあああああ!!」

しまった、

ガイは思いきり話し手の少女から距離をとってしまったことに顔を青ざめさせる。
少女はといえば、此方に差し出した手をそのままにポカンとしてしまっていた。

「あの、テテオ…すまない」
「じゃあ、あや取り?」

ポケットから毛糸の輪を取り出して首を傾げるテテオ。
どうやらガイに悪気がないことは理解しているようで、何事もなかったようにまた話を進め出した。

此処は依頼先の旅館、ひどい雨が降ってしまい一晩とまることとなったのだ。
夕飯までまだ時間があるということで、テテオは外に遊びに出ることも叶わず、旅館内の探検もしつくしてしまった様子で部屋に戻ってきた。
そして、今のこの状況。

「あや取りも、分からないな」
「そっか」

すまなそうにガイが微笑むと、テテオは毛糸をポケットにしまう。
「ごめんな、つまらないだろう」
「そう?」

テテオは部屋に据え置かれたソファにポスンと座り、不思議そうにガイを見上げた。

「ガイのほうがつまらなそうだよ」
「え、そうかい?」
「窓の外ばっかり見てたから」

だから中で遊べそうなこと探したんだけれど、
テテオは先程の彼と同じように窓の外を見やる。

「俺のために?」

ガイはその横顔を見つめ、改めてこの少女の細かなな心配りに感心する。まだ幼い幼いと思っていたが、彼女は誰よりも人の心に聡いのかもしれない。

まだ夕暮れだというのに外は夜のように暗く、ザアザアと変わらぬ雨音が響く。

「今日のご飯何かな」
「パニールじゃない人の晩飯なんて、あまりないからな」
「デザートあるかな」
「どうだろう…」
「お菓子持ってくればよかった」
「ははは、じゃあ明日帰りに買っていこうか」
「…ねぇ、ガイ」
「なんだい?」
「やっぱりアルプスいちまんじゃくしよ」
「のああああっ!!!」

また、やってしまった、

流石に二度目はキツイ。気まずい。ガイは部屋に余韻が残る自分の絶叫に嫌な汗をかいた。
チラッとテテオを見れば、少しだけ眉根をよせている。あぁやはり怒らせてしまった、そう思った矢先だった。

「やっぱり、変だ」
「…え?」
「具合悪いの?」

全くもって予想外だった。
何故テテオはそんな事を聞くのだろう。
この症状に対して言っているのだろうか、しかしこれは普段から変わらないはずなのに…

「怖がってる」
「何、が」


「ガイは私を怖がってる」


「それは俺が、女性恐怖症ってこと…」
「違うよ。女の人じゃなくて私を怖がってる」

つまり、ガイは“テテオ”という人物を怖がってる
彼女はそう言いたいのだ。

分からなくなったのはガイのほうだった。
何故自分がこの少女を怖がっている?何故彼女はそう思ったというのだ?

「此処に泊まるって決めてから、ガイが変になった」
「…」
「怖がってるのかなって…そんな気がした」

テテオはソファから立ち上がり、ガイが症状を出さない程度の位置まで近付く。
紅色の瞳はどこか暖かな光を宿し、ガイを見上げていた。

「大丈夫」
「え…」
「大丈夫だよ」


怖がらないで、怯えないで
大丈夫だから


すると、ガイは身体から必要のない力が抜けていくことに気付いた。いつの間にこんなに強張っていたのだろう。この開放感は、とても心地よかった。

大丈夫、テテオのその一言がガイの緊張を解きほぐした。

彼は恐れていた、長い時間をこの少女と過ごすことで、この難儀な体質のせいで彼女が不快な思いをするのではないかと。
そうして彼は怯えていた、そんな自分を彼女は敬遠するのではないかと。


テテオはそんな、ガイの奥底の恐怖に気付いたのだった。



「…あぁ、もう大丈夫みたいだ」

ガイは、やっと人心地を取り戻したように笑顔を浮かべる。


テテオには、助けられてばかりだな


ガイが元気を取り戻した様子を見て、テテオは満足そうに目を細める。

こうやって、この少女は今までも人々を救ってきたのだろう。
ガイは、まだ幼い、けれども聡いこの救世主にお礼をつげた。


そうして外の雨が止んだ頃、夕飯のお呼びがかかるのだった。



臆病者の仮面を剥ぐのは




(夕飯みたいだな、よし行こうか)(やったーご飯!)ギュッ(ヒッうぉああああああ!!!)


_____
女性恐怖症のガイでのお話です。なんか違うような気もしますが…す、すいません!(>_<)
こんな感じになってしまいました、うおーん

触れなくて困って悩んで嫌われないか心配してるガイさま、めっちゃヘタレでした(^q^)

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