お前が無事でよかった
苦戦した任務が終わり、途中で離脱して先に戻ったファルコを探す。
ファルコが離脱したのは俺のせいだ。
避けきれない敵の攻撃から、身を盾にしてファルコが俺を守ってくれた。
「居ない…」
でも俺はそんなことを望んでなんかいない。
もし、万が一ファルコの身に何かあったら…
「ファルコ!」
ようやく、お気に入りのイスの上に力なく体を預けているファルコを見つけた。
「さっきのフライトは何のつもりだよ、ファルコ…」
いつもより血色の悪い顔が少しだけ動く。
「俺はお前に守られないといけないほど、弱いのかよ…」
開かない目、動かないクチバシ。
痛々しい新しい傷痕。
その傷痕は、俺の弱さが刻んだ傷だ。
その傷に触れると、じわりと血が滲み出てくる。
その痛みに一瞬顔をしかめるが、眼は開かない。
このままずっと眼が開かなかったら。
「…っ…」
俺のせいだ。
俺の身がどれだけ傷付こうと構わない。
けれど、ファルコだけは
「コレ以上傷付かないでくれ…」
「……ん」
傷痕に滲む血を眺めていると、ようやくファルコの眼がうっすら開いた。
「…お前のおかげで、任務の方は上手く行ったよ」
「…そうか」
イスから立ち上がり、傷だらけの体をファルコは無理に動かす。
「無事で良かったぜ、フォックス」
血色の悪い顔が辛さを物語っているのにファルコは嬉しそうに笑う。
「誰も助けてくれだなんて頼んでない!」
ぼろぼろのくせに。
何で俺の心配をするんだよ。
「…あ?」
「わざわざ撃たれに来るなんて、そんな趣味にでも目覚めたのかよ!」
ファルコのその無神経な優しさが。
「…っ、何だよ…!」
「迷惑でしかないんだよ!」
ファルコが俺に気がないのなら。
どうか、構わないでくれ。
どうか、期待させないでくれ。
どうか…
「……勝手に…しろ!!!」
さっきまでファルコが、座っていたイスが怒り任せに荒々しく蹴り倒される。
「…お前なんか、助けなけりゃ良かったぜ」
冷たく言い放って、ファルコは俺に背を向けて歩き出す。
さっきまで笑っていたくせに。
「だがな、コレからも俺はお前を守り続けるぜ」
今は不機嫌な顔をしていた。
「…オレに守られたくなけりゃ、強くなれよフォックス」
ファルコが部屋を出て行って、残されたのは倒れたイスとオレ1人。
「バカだな…」
倒れたイスに触れると、まだ少しだけ温かかった。
「助けてくれてありがとう…」
倒れたままのイスに身体を預けると、ほんの少しだけファルコの匂いがした。
「ファルコ」

ファルコがオレに気がないのなら。
どうか、構わないでくれ。
どうか、期待させないでくれ。
どうか、俺の気持ちを気付かせないでくれ。



Thanks:) ミンサマ


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