もっと一緒に歩こう
どんより雨雲、雨上がりのぬかるんだ道。
俺の前を自信満々にファルコが歩く。
きょろきょろと見渡すと、見たこともない建物がいっぱい建っている。
『ちょっとそこまで歩いて行って見ようぜ』というファルコの急な提案に
目的地も教えられないまま、大人しくついていくことになった。
何より心配なのは、ファルコが先頭を歩いているということだ。
歩く度に揺れるファルコの尾羽に夢中で気付かなかったけど、思ってた以上に歩いている気がする。
「なぁ、ファルコ…?」
「……」
無言でくるっと、振り返ったファルコの手にはくしゃくしゃになった地図が握られている。
何となくイヤな予感がして、無言のファルコを見つめていると
「迷った」
やっぱり自信満々に迷子宣言をしてきた。
「お前なぁ!!だからあれほど、ナウスに下調べを頼めって言っただろう!」
「うるせぇっ!まだ迷ったわけじゃねえ!」
お前、ついさっき迷ったって認めてたじゃないか。
「大丈夫だ!大丈夫…だ!」
俺に言うように、自分に言い聞かすようにファルコはくしゃくしゃになった地図を開く。
俺もファルコの隣に立って地図を覗き込もうとすると
「お前は見るな!」
ひょいっと、地図を俺の手の届かない高さまで上げられる。
あくまでも、俺に目的地は明かさない気で居るらしい。
ファルコが地図を元の高さに戻す一瞬ちらっと中身が見えた。
「なぁ、ファルコ」
「あ?」
「それが地図…?」
もはや地図と言っても良いかわからない、子どもの落書きのようなその物体を持っているファルコに顔をしかめられる。
「それ以外の何だと…」
「いや、俺が悪かった」
コレは目的地に辿り着けるどころか、最悪の場合愛すべきグレートフォックスにも帰れないんじゃないかと、危機感を覚えた。
「チィッ…」
地図と長期戦をしていたファルコは、ついに音をあげて来た道へと歩き出す。
その道が来た道かどうかの自信はないけれど、きっと来た道だろう。
「もう良いのかよ、ファルコ」
先を歩くファルコから、びりびりに破って小さくなった地図が風に乗って飛んでくる。
その一片を掴みとると、強い風が吹き抜け、残りの欠片を遠くに吹き飛ばしていく。
「お前と歩けるだけで良かったんだ」
ファルコからはいつも以上に不機嫌オーラが漂っている。
「俺もその方が気楽で良いよ」
「ふん…」
掴んだ地図の欠片に目を落とすと
「素直じゃないな、ファルコは」
破れて見にくいけれど、確かに『フォックスを元気付けよう作戦1』とファルコの字で書かれてあるのを見つけた。
「あぁ?!」
「何でもない」
また吹いた風に地図の欠片を預けるとそれは空高く舞い上がっていく
欠片に導かれ見上げた空は俺の心を写すようにいつの間にか晴れ渡っていた。



Thanks:) ステ子サマ 回転サマ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!