Do not tickle me.
「どぅあっ!」
間抜けな声を発しながら思いっきり歩いてきた道の方向へと吹っ飛ばされた。
まさかこんなところで交通事故に遭うとは思ってもいなかったぜ。
「悪いファルコ!大丈夫か?」
「どこ見て歩いてんだよっ!いや走ってんだ!!」
正面からぶつかってきたこいつは悪びれる様子もなく俺の上にちゃっかりと乗っかっている。
なるほど。ダメージを受けたのは俺だけか。
「俺はちゃんと進路上にファルコが背伸びしながら歩いてるのを確認してから走ってきたんだ!」
「お前それもうタックルする気満々だったんじゃねえか!」
「普通退けるだろ?!」
「お前の普通の基準って何だ!!ってかいい加減俺の上から退きやがれっ!!」
乗っかっていたフォックスを退かそうと脇腹辺りに手を沿えると
「うぁっ!ちょっとくすぐったい!」
フォックスが面白いくらいに飛び跳ねた。
「ふぅん…」
「な、何だよ!」
「決まってんだろうが」
俺の上に乗っかっていたフォックスの肩に手を乗せて
「うわっ?!」
そのまま力を込めてフォックスを押し倒す。
フォックスの腹の上に移動して、しっかりとマウントポジションを取り返してからフォックスを思いっきり見下ろす。
「仕返しの始まりだぜ」
「ひっ!」
俺の下でもぞもぞと抵抗するフォックスの脇腹に遠慮なく手を沿わせると
「わっ、ぅわっ!」
触れただけたのに面白いくらいフォックスが暴れる。
「お前弱すぎだろ」
「わ、悪かったなっ…て、止めろファルコーっ!」
それがおかしくて、もっと反応が見たくて更にくすぐってしまう。
「あー?何か言うことあるだろー?」
「くっ…うぁっ!何だ、よ!」
フォックスが抵抗するために延ばしてきた手を掴み取って頭の上で押さえつけてやる。
「ほら、『ごめんなさい』とか『もうしません』とか『給料をアップします』とか『休暇を増やします』とか『そういや冷蔵庫に入ってたフォックスのプリン食っちまったぜ』とか、なー?」
「後半聞き捨てられないこと混ざってなかったか?!」
「あぁ、一昨日にな」
「あれ楽しみに取っ…ひっ!うわっ!」
手を脇から腰にかけてくすぐりながら滑り下ろすと、フォックスの足がバタバタと暴れ始める。
「…っぁ!バカ、ファルコー!」
「いや、本気で弱すぎだろ」
反応が楽しくて服の中に手を突っ込んで、直にくすぐってやると
「やめっ!やっ!バ、カファルコー!嫌いにな、っるぞー!!!」
もぞもぞと俺の手か逃れようと、フォックスの体が必死にもがいて暴れる。
フォックスがもがけばもがくほど服がめくれていって、余計にくすぐりやすくなっていることにこいつは気付いていない。
「ひっ…ぁ!ふぁる…っ」
やばい何だ、…このどうしようもない衝動。
更にくすぐってやろうと手を伸ばしたところで

「ちょ、ちょっと?!何やって…!!」

部屋から出てきたスリッピーに引きつった声をかけられた。
「あ?何って見りゃわかるだろ?」
目線をスリッピーからフォックスに戻すと…
そこには、服を胸まで押し上げられ息を乱して顔を真っ赤に染めたフォックスが居た。
おまけに腕を頭の上に固定されて、思いっきり俺に押し倒されて肌を弄られていると来たもんだ。
「…っ?!」
俺さっきまで何してたっけ?!!
端から見れば完璧に俺がフォックスを襲っている構図だ。
慌ててフォックスの服を本来あるべき位置に戻してやる。
「え、えーとだな…」
恐る恐る視線をスリッピーに戻すと
「…え、えっと…」
この世の終わりを見てしまったかのような顔して、俺たちを見ていた。
フォックスもフォックスで、目に涙浮かべて俺と目を合わせようとしてくれない。
いや、お前も何か言ってくれねえと完璧にスリッピーに誤解されたままだぞ!
「オ、オイラ…何も見てないから〜!!」
そそくさーっとこういう時に限って変な気を利かせ無かったことにして部屋に戻ろうとするスリッピーを全力で止める。
「おい、違うんだスリッピー!!」
掴んでいたフォックスの腕を解放して、フォックスの腕の側に移動する。
スリッピーもフォックスも何事かと不安げに俺を見てくる。
「こうして」
自分の体の向きをフォックスの腕を中心に直角に回転させて
「こうして」
足をフォックスの首に掛けて
「こうだーっっ!!!」
思いっきり体を反らせる。
「っ?!痛ぁああっ!!!?」
フォックスの肘関節が伸展方向に強制される。
決まったー!!!
腕挫十字固だー!!
「ほ、ほら、な!俺達ワザの練習してただけだぜ!」
「そうだよねっ!オイラ変な誤解しちゃったよ」
フォックスの腕が折れちまう前に、スリッピーの誤解とワザを解いてやった。
「フォックスもファルコも人の部屋の前であんまり暴れるなよな〜」
そう言って部屋の中に戻っていくスリッピーを見送りながら、心の中で小さくガッツポーズを決めた。
ナイス機転!ナイス俺!
「ファルコ……」
「ぁ?」
「今回とプリンの恨みは絶対忘れないからなっ!!!」
何とも決まらない捨て台詞を吐きながらふらふらとフォックスが逃げ去っていく。
「プリンのこと覚えてやがった…」
ってか、今思い返せば
あいつ何て声出しやがるんだ…。
もしあの場面であのタイミングでスリッピーが部屋から出て来なかったら
「危ねえな」
あのままあいつに何してた?
あいつに何しようとしやがった?
「やっぱり、距離置いた方が良いんだろうな」
俺からフォックスを守る為にも、その方が良いだろう。

「……、…」

やっぱり、
「よし、フォックスにプリンでも買って来てやるか」
無理だ!
どう距離を置こうとしてみても、すぐに頭がフォックスに会うための口実を作ろうと働きやがる。

仕方ねえだろ?
それくらいあいつが好きなんだから。



Thanks:) M,Uサマ


あきゅろす。
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