デキゴコロ
ちょっとした好奇心と出来心で机の上に不用心に投げてある持ち主不在のタバコの箱に手を伸ばしてみた。
いつもファルコが好んで吸っているタバコだ。
ファルコが吸えるんだったら、俺にだって吸えるはずだ!
そんな良くわからない対抗心でファルコがやるみたいに格好付けてタバコの箱の上の方を叩いてみても、
「あれ、結構難しいんだな…」
タバコが上手く出てこない。
ファルコの姿を思い出しながら試行錯誤して何度か試してみても満足の行く結果にならなかった。
ちょっと潰してしまった箱に悔しさを覚えながら、普通に1本だけ取り出して慣れない手つきで、だけど格好付けながらくわえてみた。
ヤバい、俺カッコイイかも…!
一緒に投げてあったライターにも手を伸ばして恐る恐るくわえたタバコを吸いながら、火をつけてみる。
「ゴホ…ッ」
「コラ、ガキにはまだ早いぜ」
背後から聞こえた子どもを叱るような声に、くわえていたタバコを取り上げられる。
「ゴホッ…ゴホッ」
少しだけ肺に入ってきた煙にむせながら声の正体を申し訳なく見上げると
「だからガキには早いって」
さっきまで俺がくわえていたタバコが、ファルコの口に収まって煙がはかれるところだった。
それがどうしようもなく格好良く見えるんだ。
「…俺だってファルコみたいに吸ってみたい!」
「俺はタバコなんかやらないフォックスの方が好きだぜ?」
そんなこと言われたら
「う…」
何も言い返せなくなってしまうんだ。

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あきゅろす。
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