手と手と
想いを告げられないまま気付けばもう2年。
「……っ…!」
初めてこんな形でファルコの手に触れました!
恐る恐る床へと視線を下ろすと
隣に座りあっていたファルコの指先に確かに俺の指先が乗っかっている。
ど、どうしよう…!
腕相撲やハイタッチで手を重ねたことは何度もあるけれど、こんなのは初めての経験だ。
どうやって、どのタイミングで手を離せばいいんだろう。
そんな事を悩んでいる間にどんどん時間だけが過ぎてしまって、今さら手を離すなんて不自然すぎる。
でもこうしてずっと手が触れている状態の方がもっと不自然だ!
…ファルコはこの状態をどう思ってるんだろう。
俺だけが変に意識し過ぎてるのかな。
視線を指先からファルコに移してみると
「…ファルコ」
ファルコはコーヒーの入ったマグカップを持ったまま、ぼーっとしていた。
な、何も思ってなさそうだ…!
何だよ…何だよ。ファルコのやつ!
俺だけ、俺だけがこんなにドキドキなんかして…、バカみたいだ。
「ん?あぁ、どうした?」
「…そのコーヒー飲まないのならくれないか?」
「ほら、こぼすなよ」
コーヒーをもらうという口実で、マグカップを受け取るために乗っかっていた手をファルコから離すことに成功した。
我ながら上手く離せたと思う。
「ありがとう」
ようやくファルコから離せた手は変に緊張して少し汗ばんでいた。
指先にはさっきまで感じていたファルコの温もりとは違う、少し温くなったコーヒーの入ったマグカップの温もりが伝わってくる。
それが何だか物足りなくて
「……」
この気持ちを誤魔化すように一気にコーヒーを呷った。
現実はこのコーヒーみたいに、全然甘くはない。
「…っ?!」
あ、甘くなんか…ない?
「すごい、甘い」
「ん?」
「お前ブラック派じゃなかったのか?」
予想外の甘さだった。
ファルコの好みの味というより、俺が好んで飲んでいるコーヒーの味だ。
それくらい砂糖が入っている。
ファルコが甘いコーヒーを飲むだなんて、似合わなくって思わず笑ってしまった。
「なんか最近趣味や好みがお前に似てきた気がする」
スティックシュガーの入っていた袋で遊んでいたファルコが照れくさそうに笑った。
「2年も一緒に居るから似てきたんだろうな」
「もう、2年か。これからもよろしくな、リーダー!」
ファルコが差し出してきた手に
「期待してるよ、エースパイロット!」
「おう!」
固い握手を返した。
さっきとは違う形で触れ合った手だけれど
「ちょっと席外す」
どっちもにやけてしまうくらい嬉しい。
そそくさと部屋を出て行ったファルコを見送っていると
「ん?」
さっきファルコと握手をした手に違和感を覚えた。
「まさか!」
恐る恐る手を広げてみると
「……〜っ!」
手にはしっかりと、ファルコが持っていたスティックシュガーのゴミが握らされていた。
「ファルコーッ!!!」
何でこんなやつ好きになったんだろう…!
そう思わずには居られなかったのだ。

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