サカサマ
「フォックス、お前のことが好きだ」
思いっ切り想いを込めて、まるで愛の告白のようにフォックスに囁く。
「なっ!え…?」
「好きだぜ」
ただし思いっ切り込めた想いは"好き"とは反対の意味。
「俺も、ファルコのことが…す、好きだ!」
「何だ、俺たち両想いだったんだな」
例えどれだけ本当に"好き"と言う想いを込めたとしても
フォックスには"嫌い"と言う意味で伝わってしまう。
「…っ!そんな顔して好きとか言うなよ!」
それは暇を持て余したフォックスが「今から言ったこと全部反対の意味になるからな!」とか言い出して始まったあべこべなゲームのせいだ。
「好きだ、好きだ。大好きだ」
普段言えない"好き"と言う言葉が、意味が変わるだけでこんなにも簡単に言えるだなんて。
「ファルコなんかもう嫌いだ!!バカファルコ!」
「ふーん。"嫌い"なのかよ」
いくら"好き"と伝えても、決して"好き"と言う意味で伝わらないが
「え、や…違う好きだ!!」
今まで伝えられなかった分、これからも伝えられない分を
「俺も好きだ。"アイシテル"」
"嫌い"と言う意味の"好き"に混ぜて全部伝えてしまおう。
「〜っ!!!バカファルコ!!」
怒りで顔を真っ赤にしてフォックスが鼻息荒く部屋を出て行く。
残された俺は出て行ったフォックスを追いかけることもせず、静かになった部屋に立ちすくんでいた。
例え反対の意味でも、フォックスの口から俺のことが"好き"と言う言葉が聞けたことが
「やべえ、嬉しい…」
たったこれくらいのことで、こんなにも嬉しいだなんて。
どうしちまったんだ俺。
まるでガキみたいな自分に心底呆れて、壁に背を預けズルズルと座り込む。
だけどフォックスの"好き"は俺と一緒の意味の"好き"では無い。
結局は笑ってしまうくらいの片想いだ。
「辛ぇな…」
人を好きになることがこんなにも辛いものだなんて知らなかった。
この気持ちどうしたら忘れてしまえるんだ…?
どうしら楽になれるんだ?
「チィッ…!」
苛立ちで壁を叩いたのと同時に隣にあった扉が静かに開いた。
そこからさっき出て行ったばかりのフォックスが出て行った時と一緒の真っ赤な顔を覗かせていやがった。
「どうした、フォックス」
目が合った瞬間に更に顔を真っ赤にして
「ファルコのこと…大好きだからな!」
部屋中に響く大声でそれだけ叫ぶと走り去っていった。
「何とどめさしに帰って来てんだよ…」
この心臓に悪いゲームは、いつまで続くんだ?
こんなゲーム早く終わってしまえば良い。
そして二度と俺を期待させないでくれ。

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あきゅろす。
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